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不可抗力じゃないの?
新型コロナウイルスなどで社員が休む場合ですが、休むに至った経緯・理由によって違ってきます。
感染原因が明らかに企業の業務に起因していない場合には、企業に責任はないと考えらえますので、休業手当の支払いは必要ありません。感染の有無に関係なく、都道府県知事の要請による就労制限により休む場合も同様に考えられますので、休業手当の支払いは必要ありません。
感染の不安から社員の希望で自主的に休む場合も同様に考えられます。このうち、感染して、つまり疾病を発症したことにより労務不能となる場合には、健康保険の傷病手当金の申請手続きを行うことで対応していただくことになります。
しかし、社内で感染した社員が出たので、他の社員にも休むように企業から命じた場合には、企業の不可抗力ではなく、企業の責に帰すべき事由にあたると考えられるため、休みを命じた感染者以外の社員に対する休業手当の支払い義務があると考えられます。
企業から「不可抗力だから休業手当は支払わない」との主張がなされる例も散見されますが、法的には、企業自らの判断や意思によるものではないから責任はないとすることはできません。
ポイントは、「休業になった原因は労働者に責任があることか」という視点でみなければならないことです。新型コロナウイルス感染症の対策のために、感染したわけではない従業員らを休業扱いにするなど自粛策をとる場合には、労働者に責任がないということになります。
また、労基法26条の休業補償の対象は、不可抗力以外は支給対象になってくると受け止めておく必要があります。たとえば、取引先の倒産により業務量が減少したため、従業員を休ませたなどは典型です。一見、会社に責任がないように見えますが、法的には、従業員には全く責任がないので、会社が責任を負って休業手当を支払う義務が生じることになります。
納得いかないかもしれませんが、客観的にはこのようになります。
※傷病手当金とは
業務外の病気やけがの療養のため労務不能と認められ、企業が給料を支払わない場合に(厳密にはさらに詳細あり)、所得補償の意味で健康保険制度から支払われるものです。労務に服することができなかった期間が支払いの対象です。
支給額は、日本年金機構や健康保険組合に登録してある標準報酬月額の3分の2です。なお、労務に服することができなかった期間には、発熱などで自宅療養した期間も含まれます。
また、やむを得ない事情で医療機関を受診できず、医師の意見書がない場合においても、事業主の証明により労務不能と認められる場合があります。
※国民健康保険の被保険者に対する新型コロナウイルス感染症の特別措置
健康保険の適用になっていない社員で国民健康保険に加入している社員については、条例により、新型コロナウイルス感染症に感染などした場合に、傷病手当金を支給する場合があります。制度の有無及び詳細や制度要件などは、国民健康保険を担当する市町村でご確認ください。
年次有給休暇消化は申請があってから
病気休暇に年次有給休暇を利用することは不可能ではありませんが、条件があります。
企業の意思で自由に年次有給休暇にできるわけではありません。企業が一方的に年次有給休暇を消化させたり、充当したりする行為は違法となりますので注意が必要です。
年次有給休暇は、社員の請求する時季に与えなければならないものですので、企業が年次有給休暇の利用を一案として提案することはできますが、利用は、社員の請求に基づいてということになります。
社員の年次有給休暇の取得権は、一定の勤続年数などに基づいて法律上、当然に発生していますので、あとは社員の請求がある場合にということになります。
新型コロナウイルス感染症などの疾病を想定し、就業規則に病気休暇について詳細に規定をしておくべきと考えます。
病気の原因は業務か?
社員が新型コロナウイルスに感染し、その感染の原因が業務であると認められる場合には、労災保険の対象になります。
これは、新型コロナウイルス感染症に限らず、病気だからと労災の対象にならないとしているものではなく、病気でもケガでも業務が原因で発症したものは労災の対象になり得るというのが基本です。
もっとも、発症の原因が業務であると認めるか否かを判断するのは国=労働基準監督署です。残念ながら、企業には「労災でない」という権利はありません。したがいまして、「新型コロナウイルス感染症はわかるが、業務とは関係ない」と決めつける行為は禁物です。
認められるか否かは別としまして、まずは、労働基準監督署に労災申請し、審査の土俵に載せる段取りを整えるように助力することが大切です。
また、医師や看護師などの医療従事者、介護従事者が新型コロナウイルスに感染した場合には、明らかに業務外での感染である場合を除いて、原則として労災保険の対象になるとされています。仮に、感染経路が判明しない場合でも、個別事案ごと調査して判断するものとされていますので、労災保険の対象になる可能性があります。
●事業主の助力
請求人が自ら労災保険給付の手続きを行うことが困難な場合には、事業主が助力しなければならないことになっています(労災保険法施行規則第23条)。
参考 労災保険法施行規則第23条
「保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。」
コロナも労災?
➀新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となる可能性がある
厚生労働省は、「業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。」との方針を発表しています。
これは当然で、新型コロナウイルス感染症に限らず、業務が原因で発症したと認められた場合には、業務災害と認められます。新型コロナウイルス感染症にかかった従業員が出た場合には、まずは、労災保険請求の段取りにかかりましょう。
②医療従事者や介護従事者の労災保険の取扱い
厚生労働省は、「患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。」との方針を発表しています。
方針ベースから読めるポイントは、明らかに業務外での感染でなければ、原則、労災保険の適用対象である点です。
これは、新型コロナウイルス感染症の患者が医療機関には訪れること、新型コロナウイルス感染症にかかったと判明していなくても、無症状の方などがやってきます。そうした意味で、広くみる姿勢が見えます。
●医療従事者や介護従事者以外の労働者が新型コロナウイルスに感染した場合の取扱い
厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症についても、他の疾病と同様、個別の事案ごとに業務の実情を調査の上、業務との関連性(業務起因性)が認められる場合には、労災保険給付の対象となります。」と発表しています。
感染経路が判明し、感染が業務によるものである場合は、労災保険給付の対象となります。
感染経路が判明しない場合でも、労働基準監督署が個別の事案ごとに調査し、労災保険給付の対象となるか否かを判断しますので、まずは、労災請求しましょう。
●感染経路が判明しない場合の判断
厚生労働省は、「感染経路が判明しない場合であっても、感染リスクが高いと考えられる次のような業務に従事していた場合は、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断します。」との方針を発表しています。
●感染リスクが高いとされる業務とされるもの
(例1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務
厚生労働省方針では、「請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。」とされています。
ただし、同一事業場内で、複数の労働者の感染があったとしても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、「複数の感染者が確認された労働環境」には当たらないとの考えです。
(例2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等になります。
ただし、ここにあげた業務に限定しているわけではありません。
近接など接触機会が多いと思われる業務に従事して感染者が出た場合には、労災保険の請求を試みることも十分考えられます。
新型コロナウイルス感染症に係る疾病の他でも、細菌やウイルスなどの病原体による疾病については、以下のように業務上の疾病として規定されています。
六 細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
4 屋外における業務による恙虫病
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
不採用・解雇・雇止めは許される?
➀採用内定の取消し
労働契約が成立していると認められる採用内定については、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、内定取り消しは無効になります。つまり、契約が成立している場合には、解雇の違法性の判断基準で判断されることになります。
解雇が正当と言える理由があり、社会常識に照らして解雇が酷ではないということが必要になります。したがいまして、採用内定取り消しを軽々しく行うとリスクが大きいと考えられるため、その防止のための経営努力が要請されています。
また、採用内定取り消しではないものの、労働契約の始期が到来した(雇用契約が始まっている)後で、使用者判断で自宅待機などにした場合には、休業が企業の責任になるものは、60%の休業手当の支払いが必要になります。
②解雇
客観的合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、解雇は無効になります。解雇回避努力が求められます。
③雇止め
有期雇用労働者の雇止めは、契約期間があるからその終了と同時に契約解約でいいと簡単に認められない場合がりますので注意が必要です。
有期雇用労働者から契約更新の申込があり、次のいずれかにあたる場合には、その雇止めは、客観的合理的な理由があること、社会通念上相当であることという解雇の基準によって妥当と判断されない場合には、それまでと同じ条件でその申込を承諾したものとみなされるとなっています。
Ⓐ過去に反復更新された有期雇用契約で、その雇止めが無期の雇用契約と同視できる場合
Ⓑ有期雇用契約が更新されるものと労働者が期待するような合理的な理由がある場合
また、雇止めの手続きでも、有期雇用契約の更新をしない場合には、、少なくとも契約期間満了の30日前までに、雇止めの予告をする必要があるとされています。
このルールが適用になる有期雇用契約は、3回以上更新されている、または、1年を超えて雇用されている労働者の契約が対象です。
ちなみに、有期雇用労働者の解雇は、通常の解雇よりも厳しいルールがあり、やむを得ない事由がなければ、期間の途中で解雇することができないことになっています。
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