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セクハラ=セクシャル・ハラスメントは、
受けた側が嫌がっている性的な行為(嫌がらせの言動)のことです。
セクハラの対象になり得る行為として具体的には、
●スリーサイズを聞く、卑猥なことを言う、「彼氏はいるの?」「今日は生理日か」「もう更年期か」、性的な経験・性生活の質問、性的なうわさをする・からかうなどの言動。
●「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」「女性は職場の花でありさえすればいい」「男の子、女の子」「僕、坊や、お嬢さん」「おじさん、おばさん」「〇〇ちゃん」「男いらず」「子宮で考えている」などの言動。
上司の知らないところで、このような行為があった場合、被害者と言い得る従業員は、上司や人事担当者などに訴えてきます。
セクハラは、密閉空間や他人がいない空間で行われることが多いため、訴えがあって会社も初めて知ることがほとんどです。
そして、セクハラの声が挙げられると、たいていの場合、「セクハラに当たるか当たらないか」に視点・重点が行きます。
しかし、セクハラの訴えがあった場合は、訴えの内容を聞き取り、会社は、できる限りの適切な対応をする必要があります。対応をしないことや対応しても適切な対応でなかった場合には、セクハラ行為にプラスして対応について問題の声があがることになります。
とは言っても、
「どう対応すればいいのかわからない」
「対応なんかやったことがない」
というのが本音かもしれません。当然、やったことないものはわかりません。対応については、非常に細かく、繊細なことに触れるため、慎重に行う必要がありますが、対応しなければいけないというスタートラインに立つことが重要です。
まったく対応しない例も多くありますが、傷を大きくしてしまい、大きな紛争に発展しています。セクハラは、セクハラの加害者と被害者という当事者だけの問題では済まず、会社の職場環境の問題になります。対応の仕方次第で、大きな問題になってしまいます。
とはいえ、専門家でも対応実績がないと助言が難しい分野になります。当事務所は、セクハラの労働問題の対応実績が豊富です。
具体的な対応方法は、個々のセクハラ事案ごとに異なり、一般論でお伝えすることが適切になるわけでありませんので、お悩みの場合は、当事務所にお知らせいただければと思います。
セクハラの特徴は、
目撃者のいない密閉性の高い行為であること
にあります。その点で、会社の外でセクハラ行為が起きる可能性は高いと言えます。
たとえば、飲食店、エレベーター内などがあります。最近はデジタル時代ですから、メールやLINEなどを使って、デートに誘うなどのセクハラ行為も増えています。
これらは、会社(職場)内で起きることもありますが、会社(職場)外で起きるケースも多くあります。
いずれも、セクハラが密閉性の高い行為であることが、問題解決を難しくしています。
では、会社の外で起きたセクハラの訴えに関して、会社は対応しなくてもいいでしょうか?
「会社の外で起きたことは会社は関係ないだろう」となりがちですが、会社の外で起きたセクハラでも、会社は対応しなければなりません。もし、「関係ない」として対応を怠ると大きな問題になってしまいます。
外で起きたセクハラ行為でも、加害者や被害者と言い得る従業員のどちらか、あるいは、両方が、会社の従業員ではないでしょうか?その点でも、会社は全く知らないとするのは危険です。
もっとも、被害者が会社の従業員だけど、加害者は会社が全く知らない他人という場合には、セクハラ起きた場所等にもよりますが、会社が対応する必要がない場合も出てきます。
しかし、ほとんどは、会社が対応の必要を迫られます。また、会社が全く関係ないセクハラでも、被害者とされる従業員のケアの点では、会社としての配慮などが必要になると考えられます。
加害行為者のほうも、目撃者もいなし、特別に抵抗されたわけでもないから、「合意の上だった」と言えばさほど大きな問題にならないだろう・・・こんな風に考えてしまう傾向にあります。セクハラのニュースでは、加害行為者がとく類似の主張を繰り広げます。この点は、セクハラの対応の際に、向き合う要素にもなります。
次に、やっかいなのは、男女雇用機会均等法11条に、事業主は、先の定義(セクハラの定義のことです)のようなことがないよう、「・・当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」との法律が存在することです。
均等法11条は、ざっくり言いますと、企業に対し、セクハラが起きないようにする事前措置と起きた後の事後対応を適切に行う義務を課しています。通常、セクハラの声があがってから、問われることになりますが、防止対策を講じていたかについては、常日頃の労務対策のことであるだけにやっかいです。労務は日ごろからが重要で、付け焼刃が効かない所以でもあります。
これらの点は、加害行為者とされ得る者の行為が、セクハラに当たるか否かではなく、企業の職場環境に対する取り組みがテーマになることを示唆しています。
また、職場環境配慮義務も、雇用契約上の付随義務として関係することになります(労働契約法第5条)。職場環境配慮とは、生命や健康を害しないように、労働者が働く(つまり、労務を提供する)場を良好に保つ、良好な状態を維持する、良好になるように調整することへの配慮を意味しているとされます。労働者の方からの視点では、良好な職場環境で働くことが「人格的利益」となるわけです。
したがいまして、職場環境が害される(労働者からみれば)、あるいは、害している(使用者からみれば)といった状況にある状況に対処でせず、結果として、改善が何らなされないなどの評価になった場合には、利益侵害にもなり得ますし、そのような主張がされるリスクがあるわけです。
このように、具体的にしないとなかなか責任者や管理職、あるいは、指示命令する立場の従業員には理解しにくいものです。実務では、具体的例を含めて詳細に説明して伝える責務があります。
実際の例をみておきます。
「使用者は、被用者との関係において社会通念上伴う義務として、被用者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう職場環境等につき配慮すべき注意義務を負うが、その他にも、労務遂行に関して被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もあると解されるところ、被用者を選任監督する立場にある者が右注意義務を怠った場合には、右の立場にある者に被用者に対する不法行為が成立することがあり、使用者も民法715条により不法行為責任を負うことがあると解するべきである。」【福岡セクシャル・ハラスメント事件・福岡地判平4.4.16労判607号6頁】
企業にとっては、頭が痛くなりますが、求められる事項はけっこう大きなものなのです。こうした職場環境は日頃から整備し努力し続けることで成し遂げられていくものです。付け焼刃では難しいものです。
会社の勤務時間外に、飲み屋で従業員がセクハラ行為を行った場合でも、企業責任が関係してくるのかどうかです。つまり、業務時間外で、しかも、会社外の場所における行為であることが疑問を生じさせています。
実際の例を掲載しておきます。
帰ろうとしていたところを誘われ、2次会のカラオケの席で、被告(上司)から、押し倒す、キスをする、「今から家に帰って旦那とやるんやろ」「激しいセックスしたらあかんで」等の発言などの行為をうけ、途中、逃げる・席を移動する、「いい加減にしてください」など拒否するなどした。逃げた際には、「何で逃げるの」「そんなんやったらこの会社でやっていかれへんで」「まじめすぎんねん。なんでもまじめに考えるから、荷物が少ないとか余計なことを言ってしまうねん」等と言われた。また、途中、トレイから戻ってテーブルを挟んで被告と反対側に座った際には、原告が他の従業員に、被告会社のドライバーが荷物の送付状を勝手に貼り替えていると話したことに対し、「勝手に送状を替えているとか文句言ったらしいけど、そんなきれいごと言ってられへんねん。食うか食われるかや」などと話しかけた。
裁判所は、「・・一連の行為は性的いやがらせということができ、不法行為に該当する」、また、仕事の話をしていることもあり、「右性的嫌がらせは、職務に関連させて上司たる地位を利用して行ったもの、すなわち、事業の執行につきされたもの」として会社の使用者責任を認めています
【大阪セクハラ(S運送会社)事件・大阪地判平10.12.21労判756号26頁】。
Y2(情報誌を編集発行する会社の編集長)が、Y1会社の社外ではあるが職場に関連する場において、X(Y1の女性従業員)又は職場の関係者に対し、Xの個人的な性生活や性向を窺わせる事項について発言を行い、その結果、Xを職場に居づらくさせる状況を作り出し、しかも、右状況の出現について意図していたか、又は少なくとも予見していた場合には、それは、Xの人格を損なってその感情を害し、Xにとって働きやすい職場環境のなかで働く利益を害するものであるから、Y2はXに対して民法709条の不法行為責任を負う」
【福岡セクシャル・ハラスメント事件・福岡地判平4.4.16労判607号6頁】
こうした事例から読み解きますと、
”企業内の従業員の親睦の意味、全員参加の指示、全員参加の明示的指示をせずとも、参加しないと処遇など評価に影響する、宴会で仕事の話などし、業務に近接しているなどがみられると、使用者責任が問われる可能性がある”
と考えておくべきということになります。
たとえば、従業員同士の男女がパブのカウンターでならんで私的に飲んでいだ空間のセクハラ行為でも、会社としては、セクハラを受けたと声があがれば、放置の態度は不適切になることもあり得るので注意を要し、自社の従業員同士という点がやや重いとの評価になり可能性も否定できないと考えられます。
企業の労務リスクの視点からは、よほどはっきりしていない限り、「会社の知ったことじゃない」式は労務リスクのある態度になり得ると言えます。
会社としては、セクハラの調査を念入りに行い、結果、加害行為者がセクハラ行為を認めて謝罪もした。それでもなお、セクハラ問題が終結に至らないことが非常に多くみられます。問題はどこにあるかといいますと、被害者からみると、加害行為者が平穏無事でいることです。
実際の例をみてみましょう。
同じ部署内の上司が部下(派遣労働者)に対し行った1年余りのセクハラ行為について、「職場における女性従業員に対する言動として極めて不適切なものであって、その執務環境を著しく害するものであった」としたうえで、「・・本件各行為が一因となって、退職を余儀なくされているなど、管理職であるXらが反復継続的に行った極めて不適切なアセクハラ行為等がY会社の企業秩序や職場環境に及ぼした有害な影響は看過し難い」とされた。結果、「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうしょしたりすることが少なくないと考えられること」や各行為の内容等に照らせば、女性従業員の態度から許されると誤信していたとしても、そのことをもってXら(加害行為者)に有利にしんしゃくすることは相当ではない」とされ、出勤停止処分が有効とされました。
【海遊館事件・最一小判平27.2.26労判1109号5頁】
この例では、「被害者が、抵抗や事実の申告を躊躇することが少なくない」ことも考慮のうえで判断されています。労務実務でも、セクハラの被害者が言えないでいる態度だけで、会社が対応しないことを正当化することは、問題になると考えておくべきかと思われます。
セクハラ行為が判明し、認めている時点で、行為の内容や程度などを吟味し、処分などを検討すべきでしょう。場合によっては、他部署への配置転換も有効な対応手段と言えます。
しかし、被害者のみを配置転換するなどの対応の例も多くみられますが、不当な配置転換として別の労務問題化する率が高いと言えます。
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