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この頁では、人事権が顕著に現れる領域について労務管理のポイントを整理しておきます。典型的には、配転、出向・転籍、合併、分割、譲渡になります。合併、分割、譲渡は、M&Aや会社組織編制と密接に関係してきますので、分ける形でまとめておきます。
●配転
●出向・転籍
●合併
●分割
●譲渡
日本の長期雇用システムのもとでは、配転は、キャリア・アップを意図した職業能力の育成や人材の調査を目的として行われてきました。しかし、最近の配転は、技術革新、販売の強化、業種転換などの経営合理化の目的として行われる一方で、休職や復職絡みの緩和措置として、あるいは、リストラ推進や退職への追込みなどの目的で行われるものが増加しています。降車の方は、立証の可否は別として、労働者からの主張内容になりやすいとは言えるでしょう。
総合的にみると、裁判例は企業の配転を広く認める傾向にありますが、労働者の生活上の不利益を軽く見ていることが指摘されるところです。その点では、就業規則だけで突破できるわけではありません。
このような中にあって、人事異動の合理性については、労働力配置の効率化や企業運営の円滑化などの視点から労務管理する必要があります。この点では労務マネジメントの視点による対策も重視されるところです。
一方で配置命令は、企業の業務上の必要性がなく行われたり、あるいは、不当な動機のもとに行われたり、労働者が通常、受け止められる程度を著しく超えていたりすると権利濫用判断される揺るぎない最高裁の見解があります。
しかし、この最高裁においても、長期雇用システム時代の特徴を示す理由付けがなされていますので、現代の配転目的に照らして合理的といえるかという点について、実態に即してしっかり労務管理を行う必要があります。
配置命令のリスクにおける典型的に調査対象になるものの一つに、職種の限定や勤務地の限定、あるいは、労働時間の限定という労働契約による制限があります。この点の労務は、労働者の募集・採用の段階を含めた労働契約を締結する過程のリスクとして対策することになります。適用する労働条件が密接に関係してくることになります。
出向・転籍も、長期雇用を反映して以前は企業グループの形成・発展の過程において、子会社や関連会社へ経営・技術指導や従業員の育成・キャリアデベロップメントなどの目的で行われていました。しかし、最近は、高齢者の処遇や排出や余剰人員を子会社・関連会社に吸収する雇用調整目的で行われるものが増加しています。
こうした目的のもとでは、人員再配置や人員削減の手段として出向・転籍が利用されています。いずれにしましても、出向・転籍においては、労働条件の不利益変更が生じることも多く見られますので、企業としましては、この点の労務管理に留意する必要があります。
出向は、企業間の、かつ、労務を供給する企業が変わる人事異動である点が特徴です。したがいまして、契約上の根拠や手続き、賃金・キャリアなどの面を対象に対策することが重要です。
転籍は他の企業に席を置くことになる点で、通常の出向と異なる特徴があります。この部分に関する契約上の根拠や手続きの重要性が高くなりますので、労務管理を厳重にする必要があります。
総合的には、出向・転籍のリスクは、労務を提供する相手方が変わる点で、配転の場合に比べて高くなりがちです。このあたりに着目しつつ労務管理を行う必要があります。さらに、今日のように、リストラ目的の場合は、解雇要件に照らしての要件(要素)、手続き、根拠などの対策を見ることになります。
合併は、吸収合併と新設合併があり、2つ以上の会社の人的要素と物的要素が結合して一つになる現象です。リスクに関係するのは、合併によって消滅する会社の権利義務がどうなるかです。
会社法、最高裁は、吸収合併、新設合併とも消滅会社の権利義務を承継するとしていますから、労働契約は包括承継されることになります。まず一つは、この着目点に即して、合併の労務管理をすることになります。
合併の場合にリスクが発生しやすいのが、労働条件の部分です。企業様において労働条件をどのように取り扱い、処理をしているかによって合併リスクが存在している場合が多々あります。
労働契約の包括承継のルールから、合併後の労働条件は従前のものが引き継がれることになるわけですが、労働条件を統一する手段として、合併後に、就業規則の不利益変更が利用されることがあります。この点は、合併の領域における労働条件変更リスクのテーマともなりますので、これを二つ目の着眼点として、双方の視点から労務管理を行うことになります。
会社分割は、分割する部門の営業を新設会社に受け継がせる新設分割とすでにある他の会社と合併させる吸収分割がありますが、従業員の承諾なしに従業員の権利義務が一括して分割会社に移転されるというのが基本です。
会社分割により従業員を転籍や異動する場合、株主総会との関係、対象となる従業員や労働組合への通知などの手続きに基づくことが求められます。また、分割先の会社に強制的に承継されるか、分割会社に強制的に残されるのかが、従事する職務によって異なってくるため、対象となる従業員の判断を慎重にすること求められます。この辺は、労働契約承継法などに従った実態と同時に、裁判例の見解をも踏まえながら労務管理することになります。
会社分割において労働組合との交渉が存在する企業においては、分割のための協議内容や手続きが重要になってきますので、労働組合との交渉ステージとしての視点を加えて労務管理することになります。
営業譲渡は、事業活動のための有機的組織体の営業(同一性が認められる営業)を契約により、一体として譲渡することとされています。営業の構成部分が、個別に譲受人に移転されますから、合併とは区別されるものです。
営業譲渡は、会社の物的施設や設備だけではなく、経営組織も譲渡されるため、従業員の包括的承継に関する合意の存在の有無を見ることになります。この合意が認められるかどうかは営業譲渡リスク対策では非常に重要になります。
また、従業員の包括的承継に関する合意の取り扱いは、その合意の内容や譲渡企業と譲受企業の関係にも左右されますので、法的な手続きを含めて実態の対策が非常に重要になります。典型的には、譲渡目的の健全性の点も、譲渡リスクと密接に関係してきます。
分割リスクと同様に、譲渡リスクにおいても、労働組合との交渉が存在する企業においては、譲渡のための協議内容や手続きが重要になってきますので、労働組合との交渉ステージとしての視点を加えて労務管理することになります。
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