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首都圏中央社労士事務所

 

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1 求人票の現状と留意点

 求人票は、企業が自由に従業員の募集をするためのツールの一つです。多くの企業が利用しています。現代社会は、ネットによる求人広告が主流ですが、どの企業も求人広告を出しているだけに、ものすごい数の求人広告の中から自社の広告をみてもらうことの勝負でもあります。

 

働く先を探している者は、無職の状況にある者と職についていて転職を考えている者です。入口では、それらの職探しをしている者(求職者)は、サイトを呼び出して様々な条件を入力して出て来た企業の求人広告をみていくという行動を辿ります。

 

求人の際には、求職者がどのような行為をして仕事を探しているかに着目する必要があります。現実は、企業事情があるためその通りにいかない場合も多いのですが、応募者は、企業事情を考えて仕事を探すことはしてくれません。

 

つまり、企業が主張する企業の事情は、企業側の都合であって、仕事を探している人には関係ない領域の話なのです。厳しいようですが、この現実を受け止めて求人にとりかかる必要があります。

 

仕事に就く場合の外せない条件の中で給料を重視する求職者は、条件入力で頭に「1」を入れるのはまずないと考えるべきです。最低でも20数万円はほしいと考えて「2」から入力することになります。企業の求人が10万円代の中小企業では、その条件で弾かれることにもなってしまいます。

 

「そんなこと言っても払えないよ」は十分に理解できますが、繰り返しますが、その企業事情は応募者には無関係なのです。むしろ、10万円代の金額を掲載していますと、経営が苦しいことを自らアピールしていることと変わりありません。

 

小規模企業では、休日日数がハンデになっていることも多くあります。たとえば、週1日休日という労働条件であった場合、法的に違反の問題とは関係ないものの、求人活動の世界では、社会的に求職者に選んでもらえるかの問題になるのです。

 

会社所定の休日が年間52日です。そのほか、年末年始や夏季休業もあるとしても年間休日は、求職者からすると「休みが少ない」という印象になります。もちろん、企業としては、「いきなり休みは増やせない、ぎりぎりの人数でやっているんだ」は現状やむを得ないものでしょう。しかし、多くの場合、応募者は、そのように受け止めて求人票をみません。

 

現代は、自分の時間を確保したい思考が強く、家庭をもっている場合には、家庭の時間も描いて求人票をみます。ゆとりも持って働く時代にもなっており、酷ではありますが、週休2日が当たり前とも言えます。社会的には、ワークライフバランスの思考が不可欠になっています。働くことは生活することに直結しますから、そこで働いたらどんな自分の生活が待っているかを描いて選択します。

 

ここも、求職者の条件検索で週休1日、あるいは、年間の休みが平均的水準を下回っている場合には、求職条件画面で無条件に弾かれることにもなります。時代は、週休2日が当たり前になっていますし、そのように受け止められています。

 

ざっと、例をあげましたが、求人票の例として現状をまず、整理しておきたいと思った次第です。誤解のないようにお伝えしておきますが、ここでいう厳しい見方は、あくまでも求人票としてどう見られるかということです。

 

2 求人票の労働条件の位置づけ・留意点

 求人票をめぐる労働問題で発生しやすいのは、求人票にかかれた労働条件と採用決定後に交付された労働条件明示書(雇用契約書・雇入通知書)に記載された労働条件が一致していない場合です。

 

 求人票の労働条件と労働条件明示書などの労働条件は必ず一致しないといけないのかが問題となります。そもそも求人票は、求職者からの応募を誘う(労働契約の申込の誘引)だけのもので、何か法的な権利義務が発生する意思表示ではないのです。

 

求人票における労働条件は、あくまでも見込みと考えられています。採用面接や説明の機会などに、労働条件を説明して労働契約が締結された場合は、これが労働条件になると考えられます。

 

このことを押さえたうえで、次の2点に留意する必要があります。

㋐求人票の見込額を著しく下回るような条件は、法的に信義誠実の原則が義務として働くため(労働契約法3条4項)、違法性が問われる可能性がある。

㋑労働契約の内容である労働条件について、理解促進の責務が要請されているため(労働契約法4条1項)、㋐との関係で影響すると考えられる。

 

つまり、求人票の労働条件そのものに違法性がなくても、後日、提示した労働条件との違いが酷い場合には、違法性が問われることになることにもなるということです。この点のリスク管理は、グレーな領域であるだけに、専門家の目を通しておくことをお勧めします。

 

とりわけ、賃金や休みは問題になりやすいのですが、最近の実務では、求人票では、「正社員で月給募集」であったのに、採用されて交付した労働条件明示書では、「パートタイマーで時給」あるいは「月給で3か月の有期雇用」といったものが散見されて問題化しています。

 

また、求人票がハローワークで公開されていたものの場合は、国の機関で公開している求人票の労働条件であることで、違いがあると問題化しやすいかもしれません。法的に違法か否かの前に、信用され、問題化しにくいように担保しておくことが、実務的には大切です。

 

3 小規模企業に多い問題

 小規模企業は、経営の代表者が面接をし、採否を決定し、代表者自ら労働条件を提示する行為を一括して行うことが通常です。一般には、代表者が、労働条件明示書(雇用契約書・雇入通知書)を交付しないことが非常に多くあります。

 

労働条件は、労働条件明示書(雇用契約書・雇入通知書)などの書面(書面の書式は自由)で明示することとなっていますので、労基法違反に関係してくることになります。実際の労働条件は、抽象的かつ簡易な伝え方で通り過ぎるのではなく、詳細を堂々と伝える習慣を持つことが、労務リスク対策上、非常に大切かと思います。

 

最近は、面接のシーンでさえも、応募者は録音していることが多くなっていますので、録音されていても落ち度のないように労働条件をきちんと伝えることがリスクをなくすことにつながります。

 

録音されてまずことを話すわけではないにしても、ビジネスマナーとして、撮影や録音などの行為は当初から禁止する旨を毅然と説明し伝えておくことも一案です。もし、すでに録音を始めていた場合には、その時点で停止・消去をさせることも一つの対処です。

 

また、求人票に関して、ハローワークが確認して受理していることを主張の盾にしがちですが、ハローワークが求人票の受付段階でチェックするのは、求人票という紙に書かれた内容に、違法なものがないか、国の指針にそぐわないものがないかについてみているにすぎません。

 

そのようなことがない場合には、提出された求人票はすべからく受け付けなければならないこととされているために受け付けられた形になっています。受け付けられたからというだけで、記載内容の信ぴょう性を国が担保してくれているわけではありません。

 

補足ですが、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事したもの」は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処するという法規定があります(職業安定法第65条第8号)。念のために頭の片隅に置いておきましょう。

 

ハローワークは、企業の実態とあっているか否かまでは、確認しているわけではないですし、確認することは不可能なのです。初めての求人票受付時に、36協定や就業規則、社会保険適用事業所の書類などを提出させるハローワークも一部ありますが、それでも企業の労務制度をその場ですべて確認できたから求人票を受理しているのではないのです。

 

例)求人広告や面接での説明が問題だとして、慰謝料の支払いが命じられた例もあります。

 中途採用者の採用に際して、求人広告でも面接でも具体的な賃金額を明示せず、求人広告の記載や面接での説明内容は、同年次の新卒定期採用者の平均的格付けによる給与を支給するものとは認められないため、そのような内容の労働契約は成立しないとしながらも、求人広告や面接でそのように信じさせかねない説明をしたとして、雇用契約上の信義則に反する不法行為を認めました。慰謝料100万円の支払いが命じられています。

【日新火災海上保険事件・東京高判平12.4.19労判78735頁】

 

この例は、労働契約がまだ成立していない、労働契約成立の準備段階における企業の過失が問われた問題として、とても参考になります。

 

一般に、企業からすれば、「まだ、正式に雇用契約を結んでもいないのだから違法もへったくれもないだろう・・」と考えがちですが、客観的な評価は実態によっては厳しいものとなることが想定されます。正式な契約成立する前の段階であっても、信頼が生じている行為と評価される場合には何も責任はないとはいかない可能性があります。

 

賃金規程の規定内容にも共通することですが、求人票の記載内容でも、後々便宜的なあてはめ方をしたいという思考の基に、内容を明確に明記しない曖昧な記載の仕方にしているものが散見されます。このような記載方法は、企業における企業側のリスクを高めていると言えます。

 

たとえば、金額を示さず「業績による」としたり、「2万円から6万円」としたりなどは典型例です。

 

逆に、詳細に明確に記載することで、応募者からの信頼度が高まるとも言えるでしょう。

 

求人票に関する苦情やトラブルは、求人票を出している段階ではなく、面接における労働条件に関する発言が求人票の内容と食い違っていたり、採用時(あるいは、採用直後)の労働条件と食い違っていたりした場合に生じますので、その段階で、事後的に求人票の修正をしても対応できるわけではありません。

 

嘘はよくありません。真実を堂々と伝える姿勢が評価されると言えます。嘘を一つつくと、その嘘を隠すために他の嘘をつくという泥沼化しがちになります。企業体質としても健全化に逆行していると言えるでしょう。

 

求人票の段階で、十分に検討して、内容を適切かつ明確に記載しておくこと大切です。ポイントは、説明を求められた際に、堂々と説明できるようにしておくことにあります。この姿勢が企業の労務リスクを軽減することになります。

 

4 同一労働同一賃金との関係

 202041日、パート・有期雇用労働法がスタートしました。簡単に言いますと、企業内の正規労働者と非正規労働者との比較で、職務内容や責任の程度、配置転換などに差がない場合に、非正規という理由で賃金に差があってはいけないというものです。

 

同一労働同一賃金の詳細は、同一労働同一賃金のページに譲りますが、求人用においても矛盾が生じないように記述しておく必要があります。

 

たとえば、いままで、パートタイマー労働者には通勤手当(通期交通費)は不支給だった場合です。これからは、パートタイマー労働者という区分けだけで、通勤手当の不支給が許されなくなりました。たとえ、ハローワーク以外の求人でもです。

 

以上、求人の際の労働条件を中心に採用の話と関係させて触れさせていただきました。詳細は、実務で個別に対応することになりますので、迷いや不安が生じた、あるいは、しょうじそうだという場合には、ぜひご相談いただければと思います。

 

 

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