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首都圏中央社労士事務所

 

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1 賃金の支払い原則とよく発生する問題

賃金の支払い原則は、すっかり定着していますが、それでもなお、問題点は生じています。

賃金原則のうち、少なくとも月1回、一定の期日に支払うことは支払い遅延などがない限り問題ないようです。当事務所がみていて問題が集中するのは、賃金の全額払いかと思います。この賃金全額払いの原則は年俸制をとっている場合でも適用になります。

 

全額払いは、働いた分の賃金をすべて支払うことを意味します。要するに、働いた分と比べた時に少なくなってはいけないというものです。手取り金額ベースでは、法律で控除することになっているもの以外について、予め、総支給額である額面金額から控除していい項目を就業規則の規定や労使協定で決めておくなどにしておくが必要です。

 

この賃金控除に関する労使協定の件は、必ずではありませんが、労基署の労働条件調査などの際に求められることも時折あります。

 

労働法が要請しています「働いた分」の測定は、「働いた時間分」です。働いた時間を基礎に算出した賃金額よりも少ないというのが、賃金全額払いの問題です。「そんな時間なんか、業績も上げていないのに」との声を頂戴することもしばしばありますが、労基署を含め理屈として通る話にならないことをも理化しておく必要があります。

 

ここまでは、納得できるできないは別としまして、理解できるお話かと思います。問題は、イレギュラーな出来事が発生して、損害など金銭が関係し、給料から引きたいとなった場合です。俗に言う賃金相殺です。

 

みていますと、おかまいなしになんでも引いてしまって、従業員が委縮あるいは猜疑心にかられている企業(中には、手取りがゼロやマイナスなどもみかけます)、給料で調整してはいけない項目にもかかわらず、誤った賃金調整をしている企業などなど、とりわけ事案によりさまざまな状況を目にします。

 

例としましては、㋐会社車両をぶつけて、その修理代を給料から引いている、㋑顧客から回収できない売掛金を給料から引いている、㋒従業員に金銭を貸し付けて、その代金を給料から引いている、㋓営業マンの実費精算の旅費分(いわゆる会社経費計上分)を事務手続きなどの便宜性から、給与で調整(旅費という経費分を給与の支給項目で支払い戻す)、㋔従業員が賃金をいらないといって放棄したことによる未払いなどが典型です。

 

果たして、これらは自由にできるものなのでしょうか。また、実行することにに経営上の問題点はないものでしょうか。

 

㋐は、必ずしもまったく否定されるものではありませんが、原則は、経営上のコストと考えるべきもので、状況により例外として、一部を対象となる従業員に負担させることが認められることがあると考えておくべきです。裁判例を示しておきます。

費用の公平な分担の観点からは、労使の一方のみが負担することの内容に検討することが求められます。

【】

 

 

㋑は、会社債権である売掛金と従業員個人の賃金との相殺になりますので、まったく関連させてはいけないと考えるべきです。もっとも、売掛金の回収率を業績査定して、実績評価のうえ給料や賞与に関連付けることは可能と考えます。

 

未回収分の金額をダイレクトに引くことは問題になります。たとえ、従業員が引いていいと言っても、属性が異なるため実施してはいけないと考えます。実際に対行政においても、労働基準監督署から調査で賃金全額払い違反(労基法24条違反)を指摘され、是正勧告命令を受けた例が相応にあります。この場合の是正は、指定された時期までの遡及支払になります。

 

 

 

㋒は、貸付金は、企業からみれば債権で従業員からみると債務になります。会社債権と従業員個人の債務の賃金相殺になります。原則は、いけない相殺ですが、従業員が自由意志に基づいて、相殺に同意していた場合には、実施しても賃金の全額払いに違反しないとされています【シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件・最二小判昭48.1.19民集27-1-27】。

 

㋓は、㋑に類似していますが、会社の経費精算で従業員に営業活動の途上で負担させている分の返金の話です。通常は、別途、その都度旅費精算して支払いを受けるものですが、企業のよっては、毎回毎回、ちまちま動いていると手間だし大変ということで、給料の支払いと一緒に支給項目で戻して支払っているケースがあります。簡便な事務処理を優先したmのですが、経費は経費で処理をし労働の対価である賃金とは分けましょう。

 

この問題点は、総支給額が増えてしまうこと、そうなると社会保険や雇用保険の保険料が増えてしまうこと(そうならないようにさらに控除項目で引いているケースもありますが、給与体系がやや複雑化し、従業員から明細について疑念になる可能性がありますし、社会保険の調査や雇用保険の離職証明書などで、月次賃金に組み入れられないものです)、また、賃金の属性でないものが支給項目になっていることなどが問題です。

 

この問題の大きな誤算は、労務の概念で賃金の属性にあたらないものを賃金に組み入れて調整していることにあります。労務では、最終的に賃金台帳という法定帳簿の作成・保管が義務付けられていますが、ここ計算されるのは、労働の対価である賃金です。経費は労務の対価ではないため、考え方が適切とは言えないこと、場面によっては問題点が生じることなどが想定されます。

 

㋔は、従業員が賃金を「いらないよ」といった場合です。たとえば、現金支給の企業で、退職してしまって、最後の給料を取りにこないなどもその例かもしれません。基本的に賃金の時効は3年(20203月までは2年)ですので、3年(2年)以内に受け取りに来た場合にそなえておく必要はあります(実際に、もう、とりに来ないだろうと思っていて取りに来た例もあります)。

 

ただし、労使で話して、従業員の自由意志に基づいて、給料はいらないとの合意がある場合には、支払わなくても賃金全額払いに違反しないと考えられています。ただし、退職した元従業員がわざわざ「いらない」と意思表示をしてくることはまずありませんので、合意の成立が認められることは難しいと考えられます。

【】

 

補足になりますが、途中でてきました、自由意志に基づく合意は、慎重のうえにも慎重にされる必要があります。「これにサインして」式は、「自由意志に基づく」にあたるかの点で、企業の労務リスクになってしまう可能性があります。

 

2 賃金減額の問題

 当事務所に舞い込んできます労務問題でも、賃金減額に関係するものは多い傾向にあります。賃金減額は、労働条件の変更を意味します。このページでは、減額のパターンごとにお話しをさせていただきます。

 

1 一方的な賃金の減額

一方的に従業員の賃金を減額する行為は、おそらくですが、企業の裁量で自由に決めて実行できるとの思い込みによるものが大きいのかと思います。基本的なことからお伝えしておきたいと思います。

 

まず、賃金は、雇用契約の中でも重要な要素で、労働条件の中でも重要項目です。従いまして、原則は、労使が合意して減額変更できることにはなっています(労働契約法第8条)が、企業が一方的に減額することはできないのです(労働契約法第9条)。

 

経営悪化などの場合には、賃金を引き下げたいと考えることは当然ですが、一方的に引き下げることは許されていません。賃金の引き下げ行為については、裁判例では、否定されるケースが多くあります【京都広告事件・大阪高判平3.12.25労判62180頁など】。

 

2 同意に基づいた賃金の減額

従業員との明確な同意がある場合には、就業規則や個別の労働条件明示書などに反しない限り、賃金の減額が認められると考えられます。

 

特に問題となるのは、従業員が、減額された賃金額での支給を受け続けたことで同意と言えるかといった場合です。よくあるのは、「異議もなく数か月も受領しているのだから同意している」と企業が主張することです。

 

これは、黙示の同意の問題です。この点、司法の場では黙示の同意は、慎重に判断している傾向にあると思われ、簡単には、認められにくいと考えておいたほうがいいかと思います。

NEXX事件・東京地判平24.2.27労判104872頁】。

 

3 賃金制度の変更による賃金減額

企業の制度変更として、包括的に変更となった賃金制度を適用する場合、就業規則の変更により行われることがあります。この方法をとることで、従業員一人一人との個別の同意をとる必要がなくなります。

 

それでも、説明する必要はあり、説明のうえで、就業規則の変更の手順を踏むべきかと思います。ここまでの話ですと、就業規則変更でやれば問題がないように思えるかもしれませんが、ここも簡単ではありません。ほんとうに労務はめんどうです。

 

制度変更後の減額となった賃金額、その従業員に対する不利益の程度にもよりますが、賃金制度の変更の必要性とのバランスが評価対象になる点でめんどうです。とてもグレーな点になります。

 

不利益が大きい場合は、不利益緩和措置や経過措置などを考える必要が出てきます。

 

このあたりをどうするかは、企業の実情にもよりますので、一言では言えない難しい問題です。ぜひ個別にご相談いただければと思います。強行突破しますと、労働問題になるリスクは非常に高いと考えられます。対象物が、従業員にとって生活の糧である賃金であること、リスクを大きくします。

 

4 その他の賃金減額

以上のほかに、職能資格制度による格付け変更による減額、人事考課による査定の結果の減額などの問題があります。

 

職能資格制度や人事考課に根拠を置く賃金減額の大きな誤解は、法律に関係なく企業裁量で自由にできると受け止められている傾向になる点です。

 

職能資格制度に基づく賃金減額は、

 

人事考課に基づく賃金減額は、

 

このあたりは、複雑な話になりますので、個別に別途対応させていただきます。企業に訪問させていただきまして、お話させていただきたいと思います。

 

 

 

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