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内定取消が認められない場合とは

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1 労働契約が成立している内定なのか

 内定取消とは言うものの、そもそも労働契約が成立していない場合には、成立した契約を破棄する話にはならないわけです。

そこで、契約が成立したと言える内定なのかを見る必要があります。

基本的な考え方としましては、
求職者の申込みに対し、企業の承諾にあたると位置づけられる内定通知の場合には、その内定は労働契約が成立する内定となります。

たとえば、内定通知が明確になされていなくても、入社誓約書の提出を求めて、提出されていたなどの事実がありますと、労働契約が成立していると評価される可能性が高くなります。

労働契約が成立しているか否かは、事案ごとに異なるため、慎重に検討する必要があります。上記の例で言うような、「誓約書が提出されている場合は、必ず労働契約が成立している」とは限りません。いかなる誓約書なのかまで見る必要があります。

ただ、一般的には、内定通知、入社誓約書の提出などの事実は労働契約が成立しているとの評価になり得ることになります。ポイントは、労働契約が成立しているかいないのかになりますが、成立している場合に重要なのは、どの時点で労働契約が成立しているのかになります。

労働契約が成立していると考えられる時点と内定取消の時点がいつなのかは、最重要な確認事項になってきます。

2 内定取消の理由

「内定の取消事由は、使用者が、採用決定後における調査の結果により、当初知ることができず、また、知ることができないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らし内定者を雇用することが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に相当であると認められることを要し、その程度に至らない場合には、解約権を行使することはできないと解される」
【宣伝会議事件/東京地判平17.1.28労判890号5頁】

【大日本印刷事件/最二小判昭54.7.20労判323号19頁】で、内定取消事由について述べられていますが、宣伝会議事件に見るように、同様の考え方が踏襲されてきております。

簡単に言いますと、内定決定当時には知ることができない事実が判明し、その事実が雇用することに適さない場合に内定取消ができるということです。内定取消=留保されていた解約権の行使ということになります。

3 内定取消が認められない理由は

では、内定取消が認められていない実際の例を見たいと思います。

例1
 社長と面談し、「是非すぐに来ていただきたい」と言われ、応募者と入社の日付まで了承していた。翌月には、会社事務所で、具体的に雇用条件を確定させ採用するとの意思表示をしている。会社は、都合が悪くなったと当初の入社予定日を4日後ろにずらした。しかし、ずらした入社予定日の3日前(当初の入社予定日の翌日)に、電話で「今回の採用の件について、本日、方針が変更になり、現メンバーで行くこととした。新規の採用は致しません。ご縁がありませんでした」と告げた。
【World LSK事件/東京地判平24.7.30労判1057号160頁】
「・・本件労働契約が成立しているにもかかわらず、原告に対し、原告の就業開始日の翌日・・・に突然、採用を取り消す旨の意思表示をし、また、その点について何ら合理性のある理由を説明していないから・・・違法な採用内定の取消しを行ったというべき・・」
【前掲 World LSK事件】
例2
 内定取消理由として確認された内容が、「被上告人はグルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかった」という。
【大日本印刷事件/最二小判昭54.7.20労判323号19頁】
「グルーミーな印象であることは当初からわかっていたことであるから、上告人としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたのに、不適格と思いながら採用を内定し、その後右不適格性を打ち消す材料が出なかったので、内定を取り消すということは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用というべき・・」
【前掲 大日本印刷事件】
例3
「本件全証拠に照らしても、原告が、被告に対し、経歴詐称や能力詐称に当たる行為をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。・・被告は、原告の採用にあたり、人材紹介会社においてすでにバックグランド調査が実施されたものと考えていたところ、原告に対する本件採用内定通知を発した後に、原告の業務能力や採用の当否について疑問が生じたことから、(原告の前の会社)における勤務状況についてのバックグランド調査を実施し、その結果、後日判明した事情を本件内定取消の主たる理由として主張しているのであって、そもそも、本件採用内定通知を行う前に同調査を実施していれば容易に判明し得た事情に基づき本件内定取消を行ったものと評価されてもやむを得ないところである。・・被告が主張する上記事情は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものとはいえないから、本件内定取消は無効である」
【㈱ドリームエクスチェンジ事件/東京地判令1年8月7日LEXDB 25564433】

4 実例からみえること

3で上げました例から、内定取消が認められない場合の傾向がつかめるかと思います。

・経営困難などのやむを得ない状況ではないのに、入社日の直前になって内定取消を行う。
・内定取消の理由の説明がない。
・採用の不適格な要素を感じつつ内定通知をして、内定取消を行っている。
・内定通知前にやるべき事前調査などを採用内定後に行っている。
・採用内定通知前に行動すれば知り得た理由を内定通知後に理由としている。

今回あげました事例から見える範囲ではありますが、ざっとこのような行為に及んでいる内定取消は、否定されるようです。

5 採用内定・内定取消等に関する留意点

採用の制度設計をしっかり組んで、面接などをしっかり行い、その場で可能なものは把握できるように段取りをしておくことが重要になります。調査などが必要な場合にも事前に段取りと実施結果を確認しておきましょう。

また、一度、採用内定通知を出した後は、容易には内定取消が認められないため、採用後の試用期間において、能力や適正をみるようにすることもリスク回避の一案になります。

社会通念上相当と認められない理由を主張すると、恣意的な意図が見えるため、内定通知を受けた求職者の信頼が一度で崩壊し、トラブルになりやすくなります。内定取消の前に、十分に客観的に検討する必要があると言えます。

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

 

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