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採用内々定を巡る問題とは

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1 「採用内々定は何?」と考えるとわからなくなる

 「採用内定」は社会一般に広まっている表現であり言葉ですが、「採用内々定」となるとどうでしょうか。
一般に、「内定」と「内々定」って何が違うのかとなるのではないでしょうか。企業も十分によく把握して使用しているわけではないと思うことがあります。

「採用内々定」は何だろうと考えるとますます意味不明になります。最終的に採用を決定する行為は、労働契約を締結することを意味します。その点で、労働解約が成立しているか否かをみればよいのです。ただ、いつ、どうなったら労働契約が成立していると言えるのかが、竹を割ったようにはいかないという難しさがあります。

契約の世界は、契約の成立=契約の締結、契約の開始時期、契約の解約とこうした意味で捉えていく必要があります。

採用内々定を考える場合も同じです。そもそも、労働契約が成立していないのであれば、解約や契約の取消の話の前提にならないわけです。ただし、求職者からの異議申立の行為そのものを排除することは困難でです。

2 採用内々定の通知=労働契約が成立なのか

このことを考える上で、非常に参考になる例がありますので、実際の事案で考えたいと思います。

事実概要は次のようになっています。

控訴人(企業)が被控訴人(求職者)に対し「採用内々定の通知」を書面で送付し、被控訴人は入社承諾書に記名、押印して返送した。採用内々定通知書の内容は、「・・貴殿を採用致すこと内々定しました・・」というものである。控訴人は被控訴人にその年の9月25日に電話をし、「内定式は行わないが、採用内定通知書の授与を控訴人事務所で行うことを伝え、授与は10月2日に行うことになった。9月29日になって「採用内々定の取り消しのご連絡」を書面通知した。書面の内容は、経営環境が厳しいことを理由に新規採用計画を取りやめることが書かれていた。控訴人では複数の内々定をもつ新卒者が内定や内々定を辞退する例が多く見られたため、それを少しでも減らすため内々定通知とともに入社承諾書を提出期限まで提出させたものである。一方、被控訴人は、内々定ではあるものの、内定(内々定)の取消しなどは聞いたことがなく、控訴人に就職できると考え、入社承諾書を控訴人に返送するとともに、他企業への就職活動を終了した。
【コーセーアールイー(第1)事件/福岡高判平23.2.16労判1023号82頁】

裁判所の判断

「本件内々定後に具体的な労働条件の提示、確認や入社に向けた手続等は行われておらず、控訴人が入社承諾書の提出を求めているものの、その内容も、内定の場合に多く見られるように、入社を誓約したり、企業側の解約権留保を認めるなどというものではない」
「・・説明会が1回開催されたほかは、いわゆる入社前教育等は全く行われず・・他社への就職活動を制限されることもなかった・・」
「本件内々定は、内定(労働契約に関する確定的な意思の合致があること)とは明らかにその性質を異にするものであって、内定までの間、企業が新卒者をできるだけ囲い込んで、他の企業に流れることを防ごうとする事実上の活動の域を出るものではない・・控訴人が確定的な採用の意思表示(被控訴人の申込み対する承諾の意思表示)をしたと解することはできず、また、被控訴人はこれを十分に認識していたといえるから、控訴人及び被控訴人が本件内々定によって労働契約の確定的な拘束関係に入ったとの意識に至っていないことが明らかといえる。・・始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえない」
【前掲 コーセーアールイー(第1)事件】

3 採用内々定だから労働契約が成立していないということではない

非常に重要な点ですので、補足しておきます。

2の事例の考え方ですが、あくまでも、2の事案における採用内々定は労働契約が成立しているとは言えないということです。

誓約書のやりとり、誓約書の内容、他の入社の手続き、研修状況、入社前のやりとり等の実態によっては、採用内々定であっても労働契約が成立していると評価される場合もあると考えられます。

たとえば、
・○月○日から働いてもらう前提での入社前の業務研修などが実施された。
・誓約書のやり取りの中で入社の約束がされている。
・就労開始期日が明記されている。
・他での就職活動をやめるように指示している。
・労働条件について具体的なやりとりがなされている。

他にもいろいろありますが、典型的にはこのようなことは、形式的に内々定であっても、労働契約が成立しているとの評価になり得る場合もあるものと考えられます。一般論では結論はできませんので、あとは、個別の事案ごとに実態をみるしかありません。

4 では、労働契約が成立していないからと内々定取消はできるのか

この点を考えるために、あらためてコーセーアールイー(第1)事件の記載を示します。

「本件内々定によって始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえないが、契約当事者は、契約締結のための交渉を開始した時点から信頼関係に立ち、契約締結という共同目的に向かって協力関係にあるから、契約締結段階に至る過程は信義則の適用を受けるものと解すべきである。かかる法理は労働契約締結過程においても異ならない」

この判断枠組みを示し、

9月下旬に至るまで、新卒採用を断念せず、採用に向けた一貫した態度をとっていたこと、被控訴人への説明でも、経済状態の悪化等があっても控訴人は大丈夫等と説明していたことから、「被控訴人が、控訴人に就労できることについて、強い期待を抱いていたことはむしろ当然ことであり、特に、採用内定通知書交付の日程が定まり、そのわずか数日前に至った段階では、控訴人と被控訴人との間で労働契約が確実に締結されるであろうとの被控訴人の期待は、法的保護に十分に値する程度に高まっていたというべきである」
「控訴人は、本件連絡からわずか5日後で、採用内定書交付予定日の2日前の同月30日ごろ、突然、・・本年内々定取消しを行っている。・・遅くとも8月ころには・・採用見直しを含めた更なる経営改善策が検討されており・・本件連絡当時・・内々定を取り消す可能性があることも十分認識されていたものと認められる」「・・・・かかる控訴人の対応は、労働契約締結過程における信義則に照らし不誠実といわざるを得ない」「被控訴人の直接の確認と説明の求めに対しても、被控訴人に対して本件内定(ママ)取消しの具体的理由の説明を行うこともなかった」
【前掲 コーセーアールイー(第1)事件】

結果、精神的慰謝料20万円の支払いが命じられています。補足しておきますが、被控訴人がその後就職していることなどから大きな金額になっていませんが、同様の別事件である【コーセーアールイー(第2)事件/福岡高判平23.3.10労判1020号82頁】では、50万円(一審は100万円)が認められています。

5 労働契約の成立過程の場合でもリスクがある

コーセーアールイー事件は採用内々定をめぐる問題を考えるうえで非常に有益かと思います。こうした事例を参考にあらためて留意点を整理してみますと、

・労働契約が成立しているか否かを考えるにあたり、求職者及び企業の意思表示をステップごとに詳細に検討する必要があります。
・意思表示を示す書類や電話・メールなどでのやりとりに留意しましょう。
・どうみても正式な契約は成立していないと判断できる場合でも、案内している次のステップの直前になって取消しすることは、仮に違法性がなくても、求職者からの異議申立になりやすい。
・契約が成立していなくても、契約成立過程における期待権侵害や信義則違反の問題になる可能性があり、損害賠償の対象になり得ると考えましょう。


問題として起きる頻度がそう多くはないかと思いますが、リスク管理の点から、参考にしていただければ幸いです。

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】

 

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