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首都圏中央社労士事務所

 

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1 有期雇用とは

 有期雇用を適用する際は、他の雇用形態と異なる性質があることを踏まえましょう。

正規・非正規を問わず、他の雇用形態との違いは、雇用契約に期間の定め、つまり期限があることです。場合によっては、有期雇用契約は非正規の一形態ととらえることもあります。契約に期限があることは、企業が労働者の雇用保障をしないことを意味します。ここが急所です。

 

有期雇用以外の雇用形態(つまり、無期雇用)は、企業から契約を解約したり、労働者から退職したりしないかぎり、企業が雇用を保障する制度になります。雇用契約における雇用継続の前提は、有期雇用に限っては、基本的には働きにくいことになるものです。

契約に期間が定められることで、必然的に契約の存続期間が限定されることになります。ただし、上限期間は3年(高度の専門職や60歳以上の労働者は5年)とされ、長期間の拘束を防止する措置があります(労基法14条1項、平成15.10.22通達)。一般的な実務例では、数か月から1年という期間が多くみられます。

有期雇用契約では、契約期間中は労使ともに期間中は自由に契約解除ができないために(民法628条、労働契約法17条1項)、企業は一定期間の雇用保障する義務が生じます。逆にいえば、労働者は一定期間、辞職ができなくなります。ただ、労働者が辞めたいと意思表示をしたことに対して、企業が承諾をするか否かは自由です。

また、有期雇用契約の期間中に企業のほうからどうしても雇用契約を解約する場合には、やむを得ない理由が必要とされ、争いになった際は、これを企業が立証する責任を負います。やむを得ない理由は、一般的な解雇よりも厳しく評価されるとされています(解雇が期間途中でなければならないほどの重大な理由が必要)ので、期間途中の解雇は、大きなリスクが生じます。

 

この有期雇用は、どのように設定するかについて、具体的に規制する法律がないために、労務実務では企業裁量で自由になされていると言っていいかと思います。しかし、労使紛争が多発している領域であることを知っておく必要があります。

 

企業は、積極的に有期雇用を活用することが多く、そこには、「期間満了による退職」という打ち出の小槌を出せることが背景にあるかと思います。しかしながら、この小槌を打つと揉めることが非常に多くあります。

 

労働者からみると、雇用契約が終了になってしまうことに変わりはなく、労働者にとって解雇であると受け止められることになってしまうことが、問題化の要因です。もちろん、企業は、期間満了の主張をとることになります。

 

有期雇用の場合は、ここが中心となる問題に直結する部分です。

 

2 有期雇用の労務リスク

企業が自由に設定して活用している有期雇用ですが、まったく法的規制はないのでしょうか?実は、ある程度の規制がありまして、当事務所では、次の労働契約法の問題がリスクとなることが多く、そこにリスク対策をしていないケースが多いと感じています。

 

労務リスクの一つ目は、採用時に有期雇用であること、有期雇用契約の期間の長さ、契約更新の条件をきちんと説明していないことです。抽象的な表現で伝えておいて、後に「説明した」と主張することはもめ事の要因になります。

 

例)1回の有期雇用契約の期間の長さが1か月や2か月である。企業が自由に期間を決められるはずだ。

 

果たしてこれはそうでしょうか?

 

堅い話で恐縮ですが、「労働者を使用する目的に照らして」、不必要に短い期間を定めてそれを反復しないようにする配慮義務が課せられています(労働契約法第172項)。

 

実際に異議を唱えられた場合、そもそも、特別なプロジェクトである期間で完了する場合でないにもかかわらず、短期間の雇用しか考えないことに矛盾する要素があると思われてもやむを得ないと言えます。ただし、そのことが直ちに違法と評価されるとは限りません。

 

労務リスクの2つ目は、「いつでも雇用を切りたいために短期間の有期雇用契約にしている」との労働者の疑念を生じさせていることです。

 

短期の有期雇用契約を自ら希望する労働者は別ですが、労働者の士気があがらない要因になってしまっているかもしれません。先ほどの労働契約法の条文規定をも踏まえれば、6か月や1年といった有期雇用契約期間を考えるべきと言えます。少なくとも期間の長さに対する疑念が問題になることは、ほぼ解消されるかと思われます。

 

労務リスクの3つ目は、有期雇用契約の更新の条件が極めてあいまいになっていることです。一度、契約更新の条件などをアバウトな一般的なものではなく、御社の業務内容・当該従業員の職務内容等に応じた細かいものを決めておくことが肝要です。

 

そのほうが、いい加減でないという心象にもなります。みていますと実務的には、ほとんどの企業では、一般的な抽象的な表現で示しています。決してだめだとは言えませんが、適切な取り決めとは言えないかと思います。

 

「何もなければ働いてもらう」こんな風な言葉を面接や契約更新時に発言していないでしょうか。この一言は、雇用契約を継続することの期待感の点ですごく重みが出る発言です。ここに、リスクが生じることになり

 

労務リスクの4つ目は、

企業では期間満了以外の認識しかない中で、実態として、その有期雇用契約が、期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)と変わらなかったり、継続して働けるものとの期待感を与えてしまっていたりするような雇用契約である場合には、期間満了による契約解約にならないことも多くあります。

 

有期雇用の労働問題では、この点が絡んでいることが多くあります。

 

多くの企業では、雇用契約期間を定めてさえいれば、いざ契約を解約したいときには、解雇と違い「雇用契約期間満了」の1本で契約終了にもっていけると受け止めています。そこで、典型的な裁判例を示しておきます。

 

【立メディコ事件・最一小判昭61.12.4判時1221号134頁】

〔事案概要〕

契約期間2か月の臨時工の契約を5回更新した後に雇止めの意思表示をした事案。

〔判決〕

「・・本件労働契約の期間の定めを民法90条に違反するものということはできず、また、5回にわたる契約更新によって辺労働契約が期間の定めのない契約に転化したり・・期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない」

「・・臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」

同様の考え方を示した例として、三洋電機事件・大阪地判平3.10.22労判595号9頁

 

【東芝柳町事件・最一小判昭49.7.22民集28巻5号927頁、労判206号27頁】

 〔事案概要〕

契約期間2か月の臨時工に対し、5回ないし23回にわたって更新した後に、雇止めの意思表示をした事案。

〔判決〕

「本件各労働契約は会社としても景気変動等の原因による労働力過剰状態を生じない限り契約の継続を予定していたもので・・いずれかから意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当である。・・各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり・・本件各雇止めの効力の判断にあたっては、解雇に関する法理を類推すべき・・」

「・・ところで本件臨就規8条は基幹臨時工の解雇事由を列記しており、そのうち同条3項は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、各労働契約が期間の終了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあったこと、及び上告会社における期間臨時工の採用、雇止めの実態、その作業内容、採用時及びその後における上告会社側の言動等にかんがみるときは、単に期間が満了したというだけでは上告会社においては雇止めを行わず、被上告人らもまらこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきである。・・経済事情の変動により剰員を生じる等やむを得ないと認められるなど特段の事情の存しない限り、期間満了を理由として雇止めをすることは、信義則上からも許されない。」

同様の考え方を示している例として、カンタス航空事件・東京高判平13.6.27労判810号21頁

龍神タクシー事件

 

 

これらの例は、有期契約の問題において法理と言える考え方で、踏襲されているものになります。これらに該当する場合には、期間満了退職と評価されにくくなり、有期契約の雇止めの問題から解雇の問題へと土俵が変わります。

 

そのうえで、解雇権濫用問題になるのです。多くの企業では、この点が理解されておらす、単なる有期契約満了でしかないとしか受け止められていないようで、そのことがリスクを大きくしています。

 

契約を更新するか否かは会社が決めるのだから、有期雇用労働者は、それに従うしかないと考えている企業も相変わらずたくさんあります。

 

 

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