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首都圏中央社労士事務所

 

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1 労働時間とは

 労働時間に関し、労使で意見の食い違いが生じた際に、企業において主張の根拠となるのが、就業規則や労働契約書などです。しかし、労働時間になるかならないかは、それらで決まるわけではないことが労働時間の問題をやっかいなものにしています。この点は、「そんなこと言われたら納得できない」となるのも無理もないかもしれません。

 

たとえば、就業規則で、従業員のする特定のある行為について「労働時間とみなさない」と規定していた場合、あるいは、所定労働時間以外の行為時間なので、労働時間として扱わないとした場合などが考えられます。

 

まず、基本事項をご案内しておきます。

㋐拘束時間は、労働時間、休憩時間、手待時間、仮眠時間をすべて含めた時間を指します。

㋑休憩時間は、労働からの解放が保障される時間(従業員はこの時間は自由に使っていい)を言います。一般に、労働時間にあたらないとされますが、実際は、個別の事案ごとに検討することになります。

 たとえば、そのように規定あるいは従業員に案内していても、実態として、休憩時間に業務をさせていた(黙示・明示)とされれば、強く労働時間であるとの主張がなされます。

㋒手待時間は、主なものを挙げておきます。タクシー運転手の客待ち時間、トラックで積み荷が出てくるまで待機している時間、2人で車両に乗って交代制で一人が運転している間のもう一人が助手席で休息・仮眠している時間、小売店でいつ来るかわからない来客を待っている時間などが考えられます。これは、一般的に労働時間にあたるとされていますが、実際は、個別の事案ごとに検討することになります。

㋓仮眠時間は、警備会社などで、休憩時間とは別に、4時間や5時間など時間を決めて仮眠をとらせた時間を言います。一般に、労働時間にあたらないとされますが、実際は、個別の事案ごとに検討することになります。

 仮眠時間を4時間と契約ルールで決めているから4時間とらせたとするのは勇み足になります。実態なのです。そうは決めていても、ある日の業務日誌をみたら、警備員1名体制であったことから、警報装置の誤作動や訪問客の応対などで仮眠時間の中での業務対応が記録されてる場合には労働時間であるとの主張になり得ます。また、そのような出来事はなくても、仮眠室というものはなく、仕事場とカーテンで仕切られただけのもので、椅子が置かれた装備しかない場所で仮眠を取らせていたなどの場合にも仮眠時間か労働時間かが問題になり得ます。

 

細かくて恐縮ですが、このようにそれぞれ扱いが違います。もちろん、これらの概念で決まるのではなく、実態で決まります。上記のような実態にあった場合には、上記のような労働時間が問題になる可能性が出てきます。

 

では、労働時間は何か?

 

労働時間は、従業員が実際に労働を行った時間で、かつ、その時間が指揮命令下におかれた時間であることを指します。俗に言う、実労働時間がこれです。実労働時間に、休憩時間・手待時間・仮眠時間は含まれません。指揮命令かに置かれたと言えるかは、労働時間のテーマでは常に問題になることがやっかいな点です。

 

一つ裁判例を示しておきます。

「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が補償されていない場合には労基法上の労働時間にあたるというべきである。・・労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令かに置かれている」さらに、業務対応する「必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に義務付けがされていないと認められる」事情もない場合には、労働から解放されているとは言えず労働時間にあたる。【大星ビル管理事件・最一小判平14.2.28労判8225頁】

 

仮眠時間の問題に対して解いたものですが、休憩時間や手待時間などの時間が労働時間にあたるか否かの判断としては非常に有意義な考え方になります。

 

ここまでは基本事項になります。

 

ただ、各時間にあたるのか否かは、実務的には非常にグレーで客観的に検討され、判断が分かれることが多く、労働問題になりやすいと言えます。

 

2 労働時間の長さの原則

 

ここで、もう一つの基本事項である労働時間の長さについても触れておきます。みなさんもよくご存知かと思います。1日は8時間以内、1週は40時間以内(特例事業場は44時間)という取り決めです。

 

この労働時間は、週休制の企業では比較的カウントしやすいと言えるのですが、弾力的な労働時間制をとっている場合には、簡単にいかない場合もあります。弾力的な労働時間制とは次のようなものです。

 

㋐1か月単位の変形労働時間制

 正確には、1か月以内の変形労働時間制ととらえていただいたほうがいいかと思います。4週間単位の変形労働時間制でも運用上は可能です。

 

※補足しておきますが、企業の把握の仕方で、4週間と1か月を同じように捉えてケースが散見されます。4週間は28日のことなので、1か月と異なります。

 

1か月の期間、起算日、変形期間の総労働時時間、各日・各週の労働時間、変形期間あたりの週平均労働時間が40時間を超えないことなどの取り決めをしなければなりません。

 

㋑1年単位の変形労働時間制

 ㋐の期間が1年単位になったものと考えていただければいいのですが、正確には、1か月を超え1年以内の変形労働時間制になります。したがいまして、6か月単位や3か月単位の変形労働時間制なども設定が可能です。

 

1年単位の変形労働時間制では、1日10時間・1週52時間など上限時間が規制されています。そのほかにも細かな規制があります。変形労働時間制の中では、最も複雑な規制になっています。

 

そうした規制のめんどうさを考えても、季節など業務に繁閑があるような業態の企業では、法定労働時間の枠の中で運用が可能になり、割増賃金の発生抑制に効果があるものとなることからメリットがあります。

ただし、実務上、実際の労働時間の算出やそれに基づく残業代の計算においては、これまで目にしてきた多くの企業が間違えていますので、注意が必要です。特に、残業代の計算を税理士に任せている企業(多くのケースは小規模企業ですが・・)場合には、労基署の調査などになった場合や労使紛争になった場合に問題になります。

 

そもそも、残業代の計算などの作業は、その算出方法は労働基準法及び労働基準法施行規則に定められている労基法の業務ですから、会計・税務とはことなるものと考えます。

 

㋒専門業務型裁量労働制

 裁量労働制は、「裁量」に重きが置かれています。仕事の遂行の方法を従業員に委ねることになっています。ここが「従業員の裁量」です。よって、業務遂行の手段や時間配分などの決定について使用者が指示をすることが実態として難しいことが求められます。対象となる業務が決まっていますので、誰にでも適用になるわけではありません。

 

裁量労働制の最大の特徴は、たとえば、1日9時間労働とみなすと規定すれば、たとえ12時間働いても9時間とみなせるので、法定の割増賃金対象の労働時間が1時間(8時間)とすることができる点にあります。

週においては、9時間を5日勤務、6日勤務、7日勤務など休日数による違いは出てきますが、1日は9時間とみなします。裁量労働制がみなしているのは、1日のみなし時間であって、週のみなし時間のルールはありませんので、週は法的規定通りに算出する必要があります。 

 

本来は、長時間労働の防止の観点から裁量労働制は認められているものですが、労働時間や割増賃金などを免れる目的になっているケースも散見されるところです。運用にもよりますが、このあたりは、企業リスクになっている箇所でもあります。

 

適切に適用していい従業員に適用しているかは労働基準監督署が調査対象にする点になります。最もチェック対象にされるところと考えていいでしょう。

 

㋓事業場外労働

従業員が、典型的には、出張、記事の取材など、労働時間のすべてあるいは一部を事業場外で労働し、かつ、労働時間を算定し難い場合は、所定労働時間労働したともなすというものです。

 

だだし、この事業場外のみなし時間は、所定労働時間を超えて働く必要がある場合は、その業務に関して、その業務遂行に必要とされる時間働いたとみなされます。

 

事業場外みなしは、まだ携帯電話がないころにできた労働時間みなしです。そのころは、業務によっては、労働時間の算定が困難とされるものが相応にあったものと推察されます。しかしながら、現代社会は、携帯電話が存在し、労働時間を把握しようとすれば、把握できできるのであれば、労働時間の算定が困難な場合にあたらない可能性もでてきます。実際には、行政通達、司法判断を踏まえて、個別の事案ごとに検討することになります。

 

テレワーク勤務の労働時間算定にみなし労働時間が関係してきます。テレワークは在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイルワークに分けて考える必要がありますが、いずれも労働時間の算定に苦慮することからみなし労働時間の適用を思考することになります。

多くは、会社の目の届かないスタイルなのでみなし労働時間制が適用されると考えてしまっているのではないでしょうか。実は、そう簡単ではありません。

詳細は、【在宅勤務】のページをごらんください。

 

3 時間外労働

時間外労働は、2種類に分けて考えて必要があります。

⓵所定労働時間が8時間未満で、所定労働時間を超えて働く時間

⓶法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く時間、または、法定労働時間以上の所定労働時間

 ※変形労働時間制の場合には、変形期間の総労働時間の枠を超えて働く時間

 

⓵は、法律が決めた時間ではなく、企業と従業員で取り決めをしている雇用契約上の労働時間です。

 

この場合には、所定労働時間を超え8時間に達するまでの時間は、労基法の割増賃金ではなく、通常の水準の時価当たり金額を支払うことになります。

 

⓶は、労基法上の法定労働時間を超えて働く場合を意味します。

 

この場合には、1日8時間、週40時間などの法的時間外労働時間を指しますので、割増賃金の対象となります。

 

ちなみに、深夜労働ですが、法定時間外の深夜労働もありますが、基本的に「深夜労働」とは、22時から5時までの深夜の時間帯に働いた労働時間を指します。時間の長さは関係ありません。

 

4 割増賃金をめぐる諸問題

 

当然ながら、割増賃金を要求するのは、従業員ですが、それに対して、企業の言い分としてあげられるものが、以下のものになります。果たして、このまま通るのでしょうか?この主張に労務リスクはないのでしょうか?

 

「そもそも法定時間外労働にあたらない」

「割増賃金は、基本給や〇〇手当に含めて支払っている」

⓷「固定残業代で支払っている」

⓸「かってに残って自習している時間は、残業を命じていないから割増賃金対象ではない」

⓹「従業員がかってに記録していた時間は関係ない」

⓺「管理職だから割増賃金は関係ない」

 

⓵「そもそも法定時間外労働にあたらない」は、割増賃金対象の時間ではないと言っている主張です。たとえば、

始業時刻前の掃除、着替え、朝礼、体操の時間はどうでしょう。女性が始業まえに化粧を15分していた時間はどうでしょう。取引先と休みの日に接待ゴルフを行う時間、しゃれたパブで、取引先のお偉いさん方を接待する時間外の時間などはどうでしょう。労働義務のない企業の所定休日に、外部の研修に参加した時間はどうでしょう。

 

個々に解説をしたいところですが、ページのボリュームが嵩んでしまいますで、やむなく割愛させていただくことをご了承願えればと思います。ただ、上記の例で挙げた時間は、簡単には、線引きできないものばかりなのです。〇〇をやった時間は労働時間、それ以外は労働時間にあたらないというようにはいかないのです。

 

エキスだけかいつまんで記しておきます。

 

⓶「割増賃金は、基本給や〇〇手当に含めて支払っている」は、近年、当事務所もよく質問を受けますし、そもそも聞かれたときには、すでに給料項目のどこかに含めて、支払っているケースがほとんどです。

 

例えば、基本給15万円と明細に記載されているのですが、いざ、従業員に聞かれると、「基本給で払っているよ」と答えるパターンがこれです。たいていの場合、従業員が、「15万円のうちいくらが割増賃金なんですか」と聞かれると、答えられないで「とにかく払っているから」でやり過ごすことになっている場合が散見されます。

 

従業員は、納得していないため、猜疑心は消えていません。こうしたことから、労使関係に溝を作ることになります。ここは、企業にとって、大きな労務リスクになります。従業員が指摘して問題化したようにみえますが、最初からリスクは存在していた問題です。

 

この問題は、ここでは、判例を示しておきたいと思います。

「・・割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することが必要であり、割増賃金に当たる部分の金額が同条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負う」【医療法人康心会事件・最二小判平29.7.7労判116849頁、LEXDB25448773

 

⓷「固定残業代で支払っている」は、割増賃金を固定残業代などとして支払うことは、それだけですぐに違法になるわけではありません。

 

結論からお伝えしますと、要するに、支払っている固定残業代が、労基法のルール通りの方法で計算した割増賃金に足りていればいいわけです。小規模企業では、割増賃金の計算がめんどう、あるいは、正しい計算方法なんか知らないなどの理由から、便宜上、固定で支払っている状態になっているのだと推察します。

 

方法としては違法ではないのですが、ここでも、裁判例を示しておきたいと思います。

「基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と(労基法371項)の規定する時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできないものというべき」として、「労基法371項の規定する割増賃金が支払われたとすることはできないというべき」【テックジャパン事件・最一小判平24.3.8労判10605頁】【高知観光事件・最二小判平6.6.13労判65312頁】

「・・基本給の内割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされ、かつ労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている場合にのみ、その予定割増賃金分を当該月の割増賃金の一部又は全部とすることができると解すべき・・」【小里機材事件・最一小判昭63.7.14労判5236頁】

 

いくつかの例をみますと、固定残業代を基本給や手当に含めて支払っている場合、労基法37条の割増賃金に当たる部分を判別できないといけないのか、明確に区分されていないといけないのかが判断の際の課題ではあります。簡単ではありませんが、詳細は、面談のうえ当事務所の業務対応とさせていただければと思います。

 

⓸「かってに残って自習している時間は、残業を命じていないから割増賃金対象ではない」は、会社は残業しろと命じたことはない、残業は知らない、残業になるような業務量はないはずだなどが主張の核の部分ではないかと思います。

 

実は、会社が書面や口頭で残業を命令していなければ、すべて残業にならないという簡単なものではないのです。

 

ここも裁判例を示しておきます。

 

 

 

 

 

⓹「従業員がかってに記録していた時間は関係ない」は、残業時間の記録で食い違いが生じた場合に、企業側が主張しますので、当事務所でもよく聞きます。

 

これには、㋐企業に労働時間の記録がないが、従業員が労働時間を記録していた、㋑企業と従業員と両方に労働時間の記録があり一致していない場合が典型です。他に従業員に労働時間の記録がないが企業に労働時間の記録がある、企業と従業員の両方に労働時間の記録がないなどの場合もあります。

 

ここも裁判例を示しておきます。

 

 

 

 

⓺「管理職だから割増賃金は関係ない」は、課長や部長といった俗に言う管理職は、残業代を支払わなくていいと考えているとうものです。社会人経験や企業内での就労実績などから、漠然とそう受け止めているケース、労基法上の「管理監督者」にあたるとかってに考えていて、割増賃金は支払わなくてもいいとしているケースなどがあります。

 

じつは、社内の役職や肩書で決まるわけではなく、勤務年数や経験などの要素で決定づけられるものでもないのです。

 

裁判例を一つ示しておきます。

 

 

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