固定残業代の定め方

「割増賃金って２５％増しだっけ？計算がめんどうだ！」

「わかっているけど、いちいち計算していられない！」

こうした状況にあるのではないでしょうか？もうすでに、多くの企業で導入しているかと思いますが、ある方法を使うことで、いちいち、毎月毎月、従業員一人一人残業代を計算しなくても済むようになります。

それが、定額割増賃金、いわゆる、固定残業代です。

たとえば、残業手当という支給項目を設けて、30,000円を支給することで残業代を支払ったことにできるわけです。

これだけ聞くと、簡単だ、導入しようと誰もが考えます。でも、落とし穴があります。

先の例では、残業手当30,000円でした。では、

㋐基本給230,000円（残業代を含む）

㋑基本給230,000円（残業代30,000円を含む）

などとした場合はどうでしょうか。どれでも自由に設定していいのでしょうか？

実は、これらに落とし穴があります。

㋐は、基本給230,000円のうち残業代がいくらなのか明確になっていません。㋑は、その点が明確です。ところが、これでも落とし穴は埋まりません。

そもそもが、これまで示した例では、何時間分の残業手当なのか明確になっていないことが問題です。

では、どうしたら解決できるでしょうか？

30,000円が何時間分の残業代なのかを計算することは避けて通れません。

なので、ここは取り組みましょう。

しかし、一人ひとり給料の金額が違いますから、何時間分かと言われると支払っている残業代の時間数は違ってくるのです。

これは、30,000円というように、残業代を固定にしていることから生じています。固定残業代が認められる要件の一つに、何時間分の残業代なのかが明確になっていることというものがあります。

一人ひとり給与金額は違いますが、20時間分の残業代を固定残業代にするというように、対象時間を同じにする＝固定することにポイントがあります。

20時間分の固定残業代が、Ａさんは、30,000円、Ｂさんは、32,000円、Ｃさんは、38,000円というようにしておくことで解決できます。

でも、「一人ひとり計算は大変だし、そもそも、残業代の計算方法が違ったり、不足が生じたりしたら、従業員から苦情が来そうで心配だ」という状況かもしれません。

そこで、社会保険労務士の出番です。

固定残業代にしてもしなくても、残業代の計算方法は、労働基準法に規定されています。月々の残業代の算出や過不足の確認は社労士が継続して行うことができます。

そもそも、残業代の計算は労働基準法に基づく業務で労務になります。したがいまして、給与計算を税理士に依頼している場合でも、給与項目に計上する残業代の算出は、労働基準法に基づいた計算が必要になります。

特に、従業員の毎月給与額が変動する企業においては、神経を使うことになりますので大変です。また、毎月、一人ひとり給与金額が違うということは、毎回、固定残業代の金額が変わることになります。

「そんなのは嫌だ、細かいし、やってられない」、「定額30,000円でいいや」

こうして、固定残業代30,000円になってしまっている企業を多く見ます。

事情はわかりますが、違法なので改善しましょう。

なぜなら、社会も、従業員も、行政機関も、残業代に関係する問題は、非常にうるさいからです。黙ってやり過ごしてはくれません。

労働時間の算出や割増賃金の算出など、必要に応じて社労士にお任せください。当事務所は、多くの残業代請求事案に関わってきました。また、様々な業種の残業代請求を行ってきております。

大事になる前に、一度、残業代に関する社労士の話を聞いてから、対策してみませんか？