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首都圏中央社労士事務所

 

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1 事実を否定すれば万事うまくいくか

 当事務所はこれまで、相当な労使紛争に向き合ってまいりました。その多くが、労使で真っ向から対立する構図になり、当事者の中では、いかなる事実や出来事があったかなどどこかへ行ってしまっていることが多くあります。

 

労使双方の感情の高まりがそのような状況を作り上げるわけですが、第三者など相談を受けるほうは、いかなる事実が起きているのか、どのような出来事が起きたのか、いかなる背景が絡んでいるのかなどに着目することになります。

 

人と人の感情をぶつけ合っても、あるいは、いずれか一方の感情に共感しても、物事が解決することはありません。

 

そんな中、企業では事実を否定する態度を貫くことが多くあります。紛争戦略としましては、否認することは常套手段になるわけでが、一方で、労働者が何をどれだけ保有しているかわかりませんし、いざとなれば、いかかなる資料などが提出されるかもわからないのです。

 

否定する態度を貫くだけですと労働者が引かない以上は、状況がエスカレートするほうに傾きます。確かに、「訴訟になったらなったで、対応すればいいだろう」との考え方もありますが、企業内の紛争を公的機関に晒すのは、賢明な策とも言えない可能性があります。

 

場合によっては、判例集などの刊行物に裁判例として掲載されることにもなります。しかも、一度掲載されれば、永久に残るわけです。一事件として扱われ、企業名・住所・電話番号・代表取締役の氏名などはすべて書面化され残るわけです。

 

判例集に掲載される場合には、出版社の編集段階で、事件名は企業名が付された形になることが多く、データーベース化され、多くの専門家の目に触れることにもなります。場合によっては、インターネットでもあっという間に広まり、極端かもしれませんが、世界中に晒されます。

 

紛争がエスカレートすることを防御することも一案のことも多くあります。不出来の自己都合との争いであったりしますと、否定する一方の姿勢もよくわかります。しかし、企業としましては、事案内容にもよりますが、事が大きくなることを防止し、小さいうちに治めることが大筋と感じることが多くあります。

 

何より、ネット上で会社のマイナスの評判でも目立つと、求職者の応募数にも影響してきます。求職者は、必ずその会社の評判をgoogleyahooで検索します。ここが企業にとっては取り返しのつかないことになります。

 

しかし、労働者なんぞが何を主張してきても否定した者勝ちだろう。では、労働者が詳細な記録を残していたらどうなるでしょうか。「そんなの、労働者が勝手に記録したものだろう。何の信ぴょう性もない」・・そういう考え方は非常によくわかりますが、果たしてそうでしょうか。このページでは、以下でこの問題を取り上げています。

 

2 従業員が勝手に記録したものは有効なのか

 当事務所で労使紛争に向き合うと、多くの事案で質問されます。「従業員が勝手に録音したものなどダメでしょ。会社は許可していないわけだし・・」「従業員が自分で記録したメモなんか、そんなのどうにでも書けるでしょ・・」と。

 

⓵録音はどう評価されているか

「民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠方法は一般的にはすべて証拠能力を肯定すべきである。・・・許されない手段すなわち著しく反社会的な方法を用いて収集されたものであるときには、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されることになると解するのが相当である。・・・本件録音テープは相手方の同意を得ないで録音されたものである。・・・録音テープの証拠能力を否定すれば相手方の違法行為を究明できないことになって、かえって正義に反する結果となる。それ故・・相手方の同意を得ずにその状況を録音する行為は著しく反社会的な行為とはいえず、本件各録音テープの証拠能力を肯定すべきである。」【エールフランス事件/千葉地判平6126労判64711頁】、【同事件/東京高裁判平8327労判70669頁】

法的には、黙って録音する行為は、何ら問題にならないというのが評価です。ただし、監禁したり、脅迫してしゃべらせたり、盗聴したりしたなどは、著しく反社会的な行為にあたる可能性があると考えます。普通に録音する行為は問題なしという、企業にとっては頭が痛い評価です。

 

⓶日記・メモ・ノートの記録はどう評価されているか

 

次のような場合は、本人作成のメモや記録ノートでも信用性が認められている

●「・・原告の日記、原告のノートは、格別不自然なところは認め難く、これらに記載された出来事が客観的な観点から記載されているかどうかはさておき、当該日付の日に当該出来事が存在したという限度での信用性は認められる」【医療法人社団恵和会ほか事件/札幌地判平27417労判113482頁】。

●「原告の日記の各記載は、日毎に出来事があった都度その内容を記載し、周囲から言われたことについてはその具体的発言を記し、加えてそれらの出来事等に対する原告の気持ちが率直に記されたものであると認められ、被告師長自身が認めている上記の点等に鑑みると、同日記が頁の抜き差しが可能な手帳であるという点を考慮しても、基本的に信用でき、概ね日記に記載のとおりの発言等が被告師長にあったというべき・・」【国家公務員共済組合ほか(C病院)事件/福岡地小倉支判平27225労判113487頁】。

●「原告が述べるこれらのノートの作成経過等に不自然なところはなく、また、これらのノートに記載されている内容はいずれも具体的で発言者等の関係者も特定されており、本件提訴に当たって事後的に作成したものとは考え難いこと及び弁論の全趣旨によれば、ノートについては日付以外の部分は基本的に当日又は数日後以内に記載され、また、ノートについては打合せの場で記載されたものと認めるのが相当であり、原告の上記供述及び前記認定事実に記載した証拠との整合性に照らせば、その記載内容についても信用性があると認めるのが相当である」【アンシス・ジャパン事件/東京地判平27327労判1136125頁】。

●「原告は、日々の労働時間をノートに記入して記録おり、当該ノートの記載は信用できる」※認定された事実によれば、時間の記録は、何日か分ずつをまとめてノートに転記していくことを繰り返していること、ノートの記載内容は日によって異なり、少なくとも何らかの記録に基づいて作成したと考えられること、原告が供述する作成経緯についても、不自然とまで言える点がないことなどから、記録の信ぴょう性が認められている【中元設備工業()事件/大阪地判平29921 LEXDB25547463】。

 ※このページでは、記録などが司法の場で肯定されている例をあげていますが、このような評価になっていない記録は否定されていると考えていいかと思います。

勝手に記録したものは、本人がどうとでも書けるから信ぴょう性がないと漠然と決めつけてしまっていることが多くあります。しかし、記録の仕方や状態により、法的には上記の例のように、信ぴょう性や証拠能力が肯定されることを想定しておく必要があります。

 

本人の記録したものが認められる価値がどこにあるのか・・・当事務所でも、だいぶ前に考えたことがあります。何件も実際の事案と向き合ううちに、「書き方、内容などが、作り話で書けるものではないと評価されるからだろう」と考えるようになりました。

 

胡適なあっせんなどの紛争解決の場でもあっせん委員の中には、「この記録は録音があるんですか」とたずね、申請人が「いえ、その都度記録していたものです」と言っても、「録音でもあればねえ・・」などという者もいます。客観的な記録の評価について学んでいないと感じる瞬間です。

 

 

皆さんは覚えていらっしゃるかと思いますが、あの日大アメフト事件です。不適切タックルの加害行為者である日大アメフト選手が300人超の記者の前で弁護士立ち合いのもと、陳述を読み上げました。その翌日は、日大アメフト部の監督とコーチが記者会見しました。両社の主張は真逆だったわけです。しかし、多くの記者や世間は選手の陳述を受け入れている様子で、監督らの主張は相手にしませんでした。では、なぜ、選手の主張は受け入れられたのでしょうか。時系列に具体的に述べられており、とても作り話で語ることができる内容ではないということが心証として伝わったからだと思われます。

 

つまり、これは本人が記録したものもそのような評価になり得ることになることを意味しています。

現代は、労働者の多くが出来事を記録化します。そして、企業側はあえてとった録音記録でもない限り、何の記録も残していないことがほとんどです。ビジネス戦略などの会議記録は残していても、対立シーンでの労働者との話を記録しているケースはほとんどありません。 

 

活字の記録については、アナログ・デジタル問わず、企業のタッチしないところで、記録化されるわけですから、防止しようがない部分です。記録化されても遜色のないように、言動に細心の注意を払うなどがリスク対応になる根幹かもしれません。

 

3 企業がとるべきリスク対策

⓵録音やカメラ撮影という行為を防止する

 現代社会は、デジタルツールであふれており、なんでも録音し、なんでも撮影します。アナログの方法をとらなくなっているのです。

「耳をたててよく聴き、手を動かしメモをとることは面倒くさい」となりますので、労働者は、黙って、普通に録音し、書類は平気で写真に残します。ボイスレコーダーなど機材も豊富ですが、記録媒体はなんといってもスマートフォンです。スマートフォンの活用は説明する必要がないと思います。かといって仕事で使用するスマートフォンを使うなとはできないわけですから苦しいところです。

 

特に、退職や解雇の話などの場面、病気休暇の話し合いの場面、入社の面接の場面などは録音しているケースが多くあります。電話による会話内容も録音しています。

 

まず、就業規則がある場合は、デジタルツールの取扱いなどについて規定することは必須事項になりました。就業規則がない場合は、所定の契約条項や労働条件明示書などに記載すべきです。

 

SNSへのアップを防止する。

 中心は、圧倒的にスマートフォンです。現代人の住まいには、FAXはもちろん、固定電話やパソコンもないスタイルが多くなっています(地震、台風、ウイルス蔓延などの災害の影響から在宅勤務などのテレワークが増加し、自宅にパソコンを所有するケースもありますが・・)。

スマートフォン一つで移動中になんでも処理をします。車にもUSB端子が標準装備になり、カーナビは単なるナビではありません。用途・昨日は多様化しており、パソコンやタブレットと変わらないことができるようになっています。

 

ネットへの書き込み、動画の編集までスマートフォン一つで、移動中にできてしまいます。投稿も一瞬です。投降後は、公開されていない状態にはもどせないし、書き込み投稿しなかったことにはできません。

 

 LINEtwitterfacebook、インスタグラム、ブログ、掲示板、2チャンネルなど自己主張(知ってほしいなど)の一貫で、あるいは、いいね・再生回数・チャンネル登録などがほしいなど自己承認欲求の一環で、自分という個人は特定されたくないが(つまり、ハンドルネームで投稿する)、認めてほしい、知ってほしいとして投稿・書き込みをします。そうでなければ公知の事実に押し上げる必要はないわけです。

 

 企業内外にかかわらず、社会秩序にかかわる行為について、就業規則などで規定できるものは規定しておくことは必須になっています。

 

こうしてみますと就業規則の規定は、完全に自社の中だけにあてはめるものではなく、社会の傾向をよくみて規定する時代になっています。決まりきった就業規則ではカバーされていないことが多く、自社独自の内容を検討すべきです。

 

最低限、規定を過去・現在自社環境、そしてこれから想定される自社環境に合わせてく正しておくことが肝要であると強く考えます。

 

ただし、繰り返しますが、労働者のメモ・日記・ノートに記録する行為、いざというときに録音する行為はシャットアウト不可能です。企業としましては、汚点の残らない、残りにくい言動を普段からいかにしないようにできるかにかかってると思います。当事務所では、この点に対する労務対策の意識がまだまだ低いと感じています。この点は、リスク管理・対策の急所の一つになります。

 

 

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