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首都圏中央社労士事務所

 

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1 同一労働同一賃金の肝

 同じ会社内の正規労働者と非正規労働者の間不合理となる待遇の差を禁止するもの。

 ☛ つまり、正社員と有期雇用労働者・パートタイマー労働者などとの待遇に不合理な差はダメとした。ただし、待遇を全く同じにしろという厳格なものではなく、均等・均衡にせよというもの。

 

 さらに具体的には、

労働条件である基本給、○○手当、賞与などの待遇ごとに、その待遇の性質や目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断すべきとされている。

 

あとは、個々の企業ごと、待遇の内容ごとに個別に検討することとなる。

 

※待遇に差があってはいけないわけではないが、差を設ける場合には、合理的な理由のある差で、説明できることが求められる。

 

同一労働同一賃金の判断要素は何か

 通常の労働者と有期雇用労働者・パートタイマー労働者との職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情がポイントになる。

 

2 事例にみる判断要素

➀基本給

 「正社員と契約社員Bの本給及び資格手当(以下「本給等」という。)には・・相違があるが、・・両社の間には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな差がある上、正社員には長期雇用を前提とした年功的な賃金制度を設け、短期雇用を前提とする有期契約労働者にはこれと異なる賃金体系を設けるという制度設計をすることには、企業の人事施策上の判断として一定の合理性があると認められる【メトロコマース事件・東京地判平29.3.23  LEXDB25545272、東京高判平31.2.20  LEXDB25562230】。

 

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、職務経験・能力、業績・成果、勤続年数などに応じて支給する場合には、応じた部分が同一であれば同一の支給、差があれば、その差に応じた支給を求めています。

 

表現は非常にはっきりしにくくわかりにくいと思われるかと思いますが、あとは個々の企業の状況によるので竹を割ったようには記述できないことも確かなのです。

 

また、正社員と有期雇用・パートタイマー労働者とが、賃金の決定基準などルールに違いがある場合には、メトロコマース事件でみたように、職務内容、配置の変更の範囲、その他の事情の要素に照らして不合理とならないものであることが必要となります。

 

②手当

㋐皆勤手当・精勤手当

会社が運送業務を円滑に進めるためには実際に出勤する乗務員を一定数確保する必要があることから、乗務員に皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであると解するのが相当であり、皆勤手当の趣旨を踏まえると、契約社員と正社員との皆勤手当の支給における相違は・・・考慮要素(職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情)に照らし、不合理と認められるものに当たると解するのが相当である」とし、皆勤手当32万円の支払いが命じられた【ハマキョウレックス事件(差戻控訴審)・大阪高判平30.12.21  LEXDB25449998】。※【長澤運輸事件・最二小判平30.6.1  LEXDB25506540】の精勤手当の判断も同様。

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、役職手当と同様、正社員と同様の役職に就く有期雇用・パートタイマー労働者は同一の支給、責任に一定の違いがある場合には、その相違に応じた支給をとなっています。

 

しかし、ハマキョウレックス事件でみたように、皆勤手当の性質によっては、不合理とされることも十分考えられます。非常にグレーな部分を検討する必要があります。

 

つまり、皆勤手当の趣旨からいって、正社員と有期雇用・パートタイマー労働者に差を設けること自体が不合理な状況になることもあり得るわけです。

 

㋑通勤手当

・・通勤手当を設けた理由は・・少しでも手当が多い方が求人に有利であるというものであり・・パート社員か正社員かを問わず、仕事場への通勤を要し、かつ、通勤形態としても、多くの者が自家用車で通勤しているという点で、両者に相違はなく・・。そうすると、本件相違に合理的な理由は見出せず、通勤手当が通勤する労働者の通勤のために要した交通費等を填補するものであることなどの性質等にかんがみれば・・本件相違は不合理なものと言わざるを得ない。【九水運輸商事事件・福岡地小倉支判平30.2.1  25549458

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでも、はっきりしています。同一の支給をしなければならないとされていますので、正社員と有期雇用・パートタイマー労働者との間の差を正当化することはかなり困難を要すると思われます。

 

㋒住宅手当

●「・・新一般職は、転居を伴う配置転換等は予定されないから、新一般職も時給制契約社員も住宅に要する費用は同程度とみることができ、新一般職に対して住居手当を支給する一方で、時給制契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は・・不合理と認められる」【日本郵政(東京)事件(控訴審)・東京高判平30.12.13  LEXDB25561908

●「住宅手当は、従業員が実際に住宅費を負担しているか否かを問わずに支給されていることからすれば・・・その手当の名称や扶養家族の有無によって異なる額が支給されることに照らせば・・生活費を補助する趣旨で・・であるところ、・・正社員であっても転居を必然的に伴う配置転換は想定されていない・・というのであるから・・(住宅手当)の労働条件の相違は・・不合理と認められる」【メトロコマース事件・東京高判平31.2.20 LEXDB25562230

 

 ㋓扶養手当・家族手当

扶養手当は、経済情勢の変動に対して労働者及びその扶養親族の生活を保障するために、基本給を補完するものとして付与される生活保障給としての性質を有していた・・。➁扶養手当は、その従事する勤務内容にかかわらず、扶養親族の有無及びその状況に着目して一定額を支給されるものであることからすると、職務の内容等の相違によってその支給の必要性の程度が大きく左右されるものではない・・。➂扶養手当については、住居手当等と異なり、支給額の上限が設けられておらず、扶養親族の状況によっては、住居手当以上の差異が生じる可能性がある・・。・・少なくとも・・正社員と同様の扶養家族に対する負担が生じている・・。正社員に対してのみ扶養手当が支給され契約社員に支給されないという相違は不合理であるといわざるを得ない。【日本郵便(大阪)事件・大阪地判平30.2.21  LEXDB25549484

※【井関松山製造所事件・松山地判平30.4.24  LEXDB25560139】でも同様に、家族手当支給の相違が不合理とされた。

住宅手当・家族手当については、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは示されておらず、個別事情に応じて労使で話し合っていく方向性が示されているのみです。非常にグレーとなりますが、上記の裁判例を基に、貴社の手当の性質から慎重に検討していくことが必要です。

 

③割増賃金(残業手当など)

割増賃金の性質を有する早出残業手当における相違が、労働契約の期間の定めの有無のみを理由とする不合理なものとされた。【メトロコマース事件・東京地判平29.3.23  25545272

時間外労働の抑制という観点から有期契約労働者と無期契約労働者とで割増率に相違を設けるべき理由はないので、早出残業手当についての割増率の相違は不合理とした。【メトロコマース事件・東京高判平31.2.20  LEXDB25562230

割増賃金の性質・目的は、法定時間外労働を抑制することであり、割増賃金の割増率の相違は、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情の要素から不合理ではないと説明することは困難であると言える。

 

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、通勤手当と同様、はっきりしています。正社員と有期雇用・パートタイマー労働者の待遇差を正当化するのは困難と思われます。

 

④賞与

無期雇用労働者がキャリアにおける育成が期待され、有期契約労働者も無期雇用労働者になることが可能であるなどの実態ある場合には、賞与の差に関する合理性が肯定されている【井関松山製造所事件・松山地判平30.4.24  LEXDB25560139、井関松山ファクトリー事件・松山地判平30.4.24 LEXDB25560138 】。他に、【ヤマト運輸事件・仙台地判平29.3.30労判115818頁】などで賞与の待遇差は不合理ではないと判断されている。

賞与は、労務の対価(つまり賃金)の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の意欲の向上、将来への期待などの多様な性質を持つ。また、人事・査定の方法や仕組みも様々である。

 現時点では、賞与の性質や特性から、差があっても不合理と判断されるリスクは高くはないと言える。

 

厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、業績等への貢献に応じた支給の場合には、貢献の評価により、同一の支給や貢献の差に応じた支給をとされています。

 

⑤定年制適用前後

 定年制は、その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら、人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに、賃金コストを一定限度に抑制するための制度ということができる・・定年制の下における無期契約労働者の賃金体系は・・定年退職するまで長期間雇用することを前提に定められたもので・・定年退職者を有期雇用契約により再雇用する場合・・長期間雇用することは通常予定されていない。・・再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。・・定年退職後後に再雇用された者であることは、・・「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たる」【長澤運輸事件・最二小判平30.6.1  LEXDB25506540

 

たとえば、「60歳で定年になった正社員が、再雇用を希望したので、会社が、定年前の待遇に対し、職務給を70%、住宅手当と家族手当をなしに、賞与の支給もなしに、1年更新の有期雇用との待遇を通知し実行した。」といった場合が典型である。定年前後で職務内容、配置の変更の範囲に違いはないと場合に、このような措置を行ってもよいかが問題となる。

 

キーとなるのは、定年後の再雇用という「その他の事情」が考慮されるかという点である。

 

長澤運輸事件では、最高裁が、定年前の無期雇用と定年後の有期雇用との賃金差を肯定する結論を出している。しかし、2020年(中小企業は2021年)パート・有期法施行後も同様に判断されるかは不明で、職務内容、配置の変更が通常の労働者と同一であると判断されても、パートや有期雇用を理由に差別扱いすることはリスクがあると言える。

 

待遇差は、合理的な理由のもとに差を説明できる状態を保持することが肝要と言えます。

 

⑥福利厚生

夏期冬期休暇の付与の差は不合理とされた

夏期冬期休暇の趣旨は・・一般に広く採用されている制度を会社においても採用したものと解されるから・・正社員に対して上記の夏期冬期休暇を付与する一方で、時給制契約社員に対してこれを付与しない」というのは不合理でと判断された【日本郵政(東京)事件(控訴審)・東京高判平30.12.13 LEXDB2556190】。なお、夏期年末手当の相違については、職務の内容、配置の変更の範囲に大きな差があり、契約社員であることを理由とした差でないとして不合理性は否定されている。※原審【日本郵政(東京)事件・東京地判平29.9.14  LEXDB25546920】では、夏期冬期休暇のほか病気休暇についても不合理と判断している。

 

一方で、福利厚生面の待遇差の合理性を認めている例がある。

 夏季特別休暇の有り・無しに関する待遇差について、正職員はアルバイトより月14.5時間労働時間が長く、夏期に5日の休暇を付与し、心身のリフレッシュを図らせることは必要性・合理性があり、アルバイトにそのような必要性があるとは認められないとして合理性を肯定し、私傷病の欠勤に関する賃金支給・不支給の待遇差についても、正職員は長期にわたり継続して就労してきた貢献があるが、アルバイトは長期間の継続雇用が想定されていないとして合理性を肯定している【学校法人大阪医科薬科大学事件・大阪地判平30.1.24  LEXDB25549457】。

※ただし、パート・有期法施行後に、正社員は長期継続していることを理由に、待遇差が認められると考えるのはリスクがあると思われる。職務内容や配置の変更の範囲、責任の程度などからしっかりと待遇差を説明できるように位置付けておくことが求められる。

 

福利厚生も、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情によって合理的な待遇差を説明することは容易ではなく、不合理と判断されるリスクが高いと考えられる(ただし、裁判例からは、個別の具体的な事情によっては適法とされる可能性もあり)。

 

3 対策の概要

 現行の賃金の基本給、各種手当の性質、趣旨を現状の設定のままに整理する。趣旨や支払い基準・考え方などの点であいまいな点、差がある場合に説明が難しい点などを洗い出す。

 

検討して、就業規則や賃金規程に規定しましょう。

 

規程は、パートタイマー・アルバイト・有期雇用の就業規則と正社員の就業規則などを別規程にするか否かなどもポイントになります。

 

同一労働同一賃金は、簡単に線引きできるものではなく、個々の企業ごとに細かく精査して検討する必要があります。

 

 

以上のように、基本給や支給項目等の性質や目的等が密接に関係しますし、社員の職務内容、責任状況、配置転換状況等の調査・分析も必要になるため、簡単に済むはなしではありませんので、迷いや不安がある場合には、ぜひ、ご相談等をいただければ伺ってお話を聞かせていただきます。

 

 

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